2020 Fiscal Year Annual Research Report
新規S100A8/A9阻害分子の発見に基づいたがん脳指向転移の機構解明とその制御
Project/Area Number |
20H03516
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
阪口 政清 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70379840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 健一 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (00711798)
近藤 英作 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30252951)
豊岡 伸一 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30397880)
木下 理恵 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (40518297)
西堀 正洋 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (50135943)
村田 等 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (90579096)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん / S100A8/A9 / HRG / 転移 / 阻害作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
S100A8/A9誘導性脳指向性転移をHRGがどのように阻害するかの分子原理の解明を目指した。HRGがS100A8/A9吸着能を示す発見し、HRGの受容体の発見を切り口に原理解明を進めている。本年度の判明した事象を示す。①HRGはS100A8/A9を吸着し、がん細胞へのS100A8/A9の浸潤、走化性亢進を抑制するが、HRGはS100A9側に親和性を有する。②HRGはがん細胞の血清誘導性浸潤、走化性亢進をも抑制することから、S100A8/A9吸着性によらない抑制効能をも有する。③がん細胞にHRG受容体が存在する仮説を立て、その候補受容体を独自スクリーニングから2つ見出した。一つはCLEC1A(1回膜貫通型)で好中球と血管内皮細胞に発現し、HRGにより活性が制御される。④好中球のネットーシスより引き起こされたS100A8/A9は、がん細胞を刺激し、増殖ならびに浸潤、走化性を亢進するが、これをHRGが抑制する。これにはHRGの好中球CLEC1Aへの作用(ネットーシス抑制)とS100A8/A9吸着作用が大きく関わる。⑤見出したもう一つの受容体候補は7開幕貫通型で、これはがん細胞側に発現している。現在この受容体を糸口にS100A8/A9吸着性によらないがん細胞抑制機構の詳細を検討している。さらに計画にはないが、HRGには未知の受容体があるものと考え、全てのCLEC family、IgG family、他複数回幕貫通型受容体群もクローニングしそれら発現vectorを追加作成中にあり、HRGの新たな受容体となりうるか独自のassay系にて検討中である。HRGのがん転移抑制機能は多岐に渡ると予想されることから、がん細胞のみならず好中球をはじめとする炎症性免疫細胞、血管内皮細胞への作用の未解明な分子機構を解く糸口になるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実績の概要にあるように、計画は概ね達成することができた。HRGはCLEC1Aを介して好中球や血管内皮細胞に働きかけ、好中球のネットーシス(がんの活性化につながる)を抑制すること(Takahashi Y, Sakaguchi M, Nishibori et al. J Immunol 2021)、血管内皮細胞の接着分子群の発現を顕著に抑制すること(Gao S, Sakaguchi M, Nishibori M et al. iScience 2020)を明らかにすることができた。また、がん細胞側に発現のある新しいHRG受容体候補も見出しており、HRGのS100A8/A9吸着性によらない間接的抑制の分子機構も明らかとなりつつある。さらに、計画に入れていなかったHRG受容体候補の網羅的解析を追加して行なっている。HRGの多機能性はがん細胞以外の多くの正常な細胞種に働きかけるためであり、それら細胞への機能発現には受容体の存在が必須である。そのためまだまだ未知な受容体があるものと考えられ、HRG受容体の網羅的解析アプローチは、HRGの効能根拠を深く理解するために重要なのである。今後の解析から当研究がさらに発展していくことが期待され、当初の計画以上に計画が進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1年度の計画研究をさらに詰めつつ、2年度の計画であるHRGとS100A8/A9が遠隔の腫瘍に応答して脳内環境のどの細胞からそれぞれ産生放出されているかを理解する研究を行う。HRGの低下と脳転移に関連性があるかを検証するとともに、HRGによるS100A8/A9阻害作用がなぜ脳選択的に起こるのか、その理由に迫る。
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[Presentation] 6.分泌性S100A11は膵臓癌の細胞運動性を高める腫瘍周囲の線維芽細胞を活性化する2020
Author(s)
合原勇馬, 光井洋介, 友信奈保子, 木下理恵, 山本健一, 山内明, 山村真弘, 近藤英作, 豊岡伸一, 那須保友, 村田等, 阪口政清
Organizer
第43回日本分子生物学会年会
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[Presentation] HNF4γ2に相互作用するタンパク質の探索2020
Author(s)
江原伸哉, 佐々木翔太, 浦部瑞穂 ,前田つかさ, 鈴木淳子, 入江亮太, 鈴木正則, 外丸靖浩, 阪口政清, FRANK Gonzalez J.,井上裕介
Organizer
第43回日本分子生物学会年会
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