2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation for molecular mechanism of carcinogenesis driven by cancer stem cells
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20H03519
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
吉田 清嗣 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70345312)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 癌 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、研究代表者がDNA損傷時にアポトーシスを誘導するp53のSer46リン酸化酵素として同定したDYRK2に関し、さらなる機能解析を目的としている。具体的にはDYRK2の、1. 組織発生における機能、ならびに、2. 大腸癌におけるDYRK2の腫瘍抑制効果の解析、の2点に関して検証した。
1. 組織発生における機能解析: Dyrk2欠損マウスの作出を行ったところ、成体のDyrk2欠損マウスは得られなかった。そこでDyrk2欠損マウスの胎生期の解析を行ったところ、肺低形成による呼吸不全を引き起こし、出生直後致死となることがわかった。またDyrk2欠損胎児は、骨低形成、腸管低形成、鎖肛、気管食道狭窄、腎低形成、四肢奇形が認められ、これら表現型の異常は、先天性奇形であるVATER症候群の症状と類似することを新たに発見した。次にDyrk2欠損マウスにおける呼吸不全の原因を明らかにするため、肺形成におけるDyrk2の機能を調べた。肺におけるDyrk2の発現を調べたところ、Dyrk2は肺形成を通して気管上皮に発現していることが明らかとなった。Dyrk2欠損マウスの肺発生初期の異常を調べたところ、気管支の分岐異常と間葉に発現しているFoxf1の濃度勾配の消失が認められた。さらにShhシグナルを活性化すると、Foxf1と下流遺伝子発現の回復が認められた。以上よりDyrk2は、Shh-Foxf1シグナルを介して肺形成に働くことが明らかとなった。
2. 大腸癌におけるDYRK2の腫瘍抑制効果の解析:大腸癌におけるDYRK2の抗腫瘍能をマウス個体レベルで解析するため、大腸特異的Dyrk2コンディショナルノックアウトマウスを60週齢まで経時的に観察し発癌の有無を調べたところ、大腸癌の自然発症は認められなかった。そこで発癌モデルを作製し、Dyrk2欠損による腫瘍形成能への影響を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DYRK2による発癌制御や癌幹細胞性の維持について分子機構の解明に取り組んでおり、発癌モデル実験に供する遺伝子改変マウスの解析を進めている。これは本研究の根幹をなすものであり、提示した仮説の検証に必須である。大腸癌におけるDYRK2の腫瘍抑制についても、さらに幾つかの機構を想定して研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
DYRK2の発癌制御と幹細胞化との関わりについて様々な癌種で示すことが今後の課題であり、引き続き幹細胞性維持におけるDYRK2の役割について、研究を進めていきたい。すでに本研究の根幹をなす遺伝子改変マウスを用いたin vivo実験が進行中であり、実験系の妥当性を評価すると共に、その分子機構解明を目的としたin vitro実験を並行して行っている。
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Research Products
(3 results)