2021 Fiscal Year Annual Research Report
Envolvement of abnormal of SETDB-related histone modification enzyme and tumor immune environment in gastrointestinal cancer
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20H03526
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
秋山 好光 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (80262187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新部 彩乃 (樺嶋) 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (20445448)
島田 周 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (20609705)
田中 真二 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30253420)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / ヒストン修飾 / 消化器癌 / 腫瘍免疫環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
SETDB1とSETDB2はヒストンH3の9番目のリジンに対するヒストンメチル基転移酵素である。これら2つは様々な悪性腫瘍で発現亢進し、癌の悪性度や予後に関連するが、有効な治療法は未だに確立されていない。ヒストン修飾因子は様々な因子と複合体を形成して遺伝子発現制御に働くが、SETDB型ヒストン修飾酵素の複合体は不明な点が多い。現在、SETDB1とSETDB2はT細胞やマクロファージでも発現変化が報告され、炎症・免疫環境との関連も示唆されている。本研究では様々な消化器癌でSETDB2とSETDB1の発現について比較する。更に遺伝発現制御に関する複合体形成の解析および腫瘍免疫環境の面から役割を検討し、両者の機能的類似点と相違点を明らかにする。 本研究計画では、初年度はin vitroを中心とし、2年目以降はそれを継続しながら、in vivo実験系を遂行する。これまでの研究成果として、レンチウイルス発現系を用いてSETDB1とSETDB2の安定発現細胞株を複数の細胞株で樹立した。さらに免疫沈降解析によりSETDB2に結合するエピゲノム因子を明らかにしたので、引き続きその複合体の機能やSETDB1結合因子との違いを検討中である。またSETDB2の機能としてとがん幹細胞性に関わる可能性が認められた。SETDB1とSETDB2の機能を解析するため、それらのsiRNAでノックダウン実験およびSETDB1のCRISPR/Cas13システムを用いてノックアウト細胞株の樹立を行なった。さらに樹立した細胞をヌードマウスとC57BL/6マウスへ皮下移植している。胃癌組織および肝癌、膵癌組織を収集し、免疫組織染色にてSETDB型タンパク質の発現異常を検討している。また皮下移植癌組織と臨床検体のCD4やCD8などの免疫細胞の染色を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はSETDB1の研究を先行させた。胃癌研究ではp53遺伝子を欠損させたC57BL/ 6由来マウス胃細胞株にレンチウイルス発現系でSETDB1を高発現させ、ヌードマウスに移植すると造腫瘍性が亢進した。移植腫瘍のRNA-seq解析の結果、コントロール細胞と比べて発現変動した遺伝子群を複数同定した。複数のヒト胃癌細胞株でもレンチウイルス発現系によるSETDB1安定発現株を作成し、マウス移植腫瘍で発現変動した遺伝子を調べ、ヒト・マウス共通のSETDB1標的遺伝子の探索を進めた。現在、一部の遺伝子に関してはクロマチン免疫沈降(ChIP)解析も行なっている。同様にLC-MS/MS解析を行った結果、既知のSETDB1結合タンパク質ATF7IPを含む複数の因子の結合が予測された。また先行研究ではヒトSETDB2が他のエピジェネティクス構成因子Xと結合することが明らかになり、その因子はヒトSETDB1とも複合体形成した。既に胃癌組織ではSETDB2発現は報告済みなので、SETDB1発現を検討している。 C57BL/ 6由来マウス肝癌細胞株にSETDB1を高発現またはノックダウンさせ、同系マウスに皮下移植するとSETDB1高発現により腫瘍が増大し、ノックダウンでは縮小する成果を得た。移植腫瘍組織から初代培養を行い、培養細胞株樹立に成功した。SETDB1高発現細胞株のRNA-seq解析により、発現変動する遺伝子群を複数同定し、ヒト肝癌細胞にSETDB1を高発現またはノックダウンさせ共通遺伝子を探索している。移植腫瘍組織のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片を作成し、CD3他、複数の免疫細胞マーカーを用いてどの免疫細胞が関与しているのかを検討中である。さらにヒト肝癌組織100例以上のSETDB1発現解析が完了し、SETDB1高発現が肝癌患者の予後に関わることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はin vitroおよびin vivo系の研究を継続する。 1)SETDB型タンパク質の機能と組織内発現状況の解析を継続する。RNA-seqの結果をもとに、マウスSETDB1高発現胃腫瘍とヒトSETDB1, SETDB2安定発現癌細胞株を解析し、標的遺伝子の共通性や違いをRT-PCRとクロマチン免疫沈降法(ChIP)で明らかにする。LC-MS/MS解析によるSETDBタンパク質結合因子の網羅的探索を進める。胃癌および他の消化器癌の臨床検体数を追加して、SETDB1発現およびそれらの下流遺伝子、結合因子(ATF7IP含む)の発現解析を進め、臨床病理学的諸性状との関連を明らかにする。この成果をSETDB2の成果と比較する。膵癌についてはSETDB1高発現またはノックダウン細胞化株樹立を進め、胃癌、肝癌のSETDB1標的遺伝子と比較する。 2)SETDB型タンパク質の造腫瘍性および腫瘍内微小環境への関与を調べる。マウス胃細胞でSETDB1を高発現させると造腫瘍性が亢進したので、その分子メカニズムをRNA-seqの結果から解明する。またSETDB1高発現及びノックダウン肝癌細胞のC57BL/6マウスへの皮下移植により得られた腫瘍の免疫細胞表面マーカーの免疫組織染色により、コントロールと比べて免疫細胞浸潤に違いが検出され、SETDB1高発現は免疫回避に関与する可能性が考えられた。本年度はその分子メカニズム解明とヒト組織検体での検証を行う。既にRNA-seqにより免疫回避の可能性が報告されている因子が同定されているので、その因子を高発現またはノックダウンしてマウスに移植することで、腫瘍変化を検討する。 3) 学会発表と論文作成を行う。
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Research Products
(1 results)