2020 Fiscal Year Annual Research Report
抗真菌薬を基盤とした胆道・膵臓がんに対する新規治療薬の創製
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20H03533
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
齋藤 義正 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (90360114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大江 知之 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 准教授 (30624283)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胆道・膵臓がん / 抗真菌薬 / オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、これまでに難治性がんの代表である胆道・膵臓がん患者由来の組織を用いて、オルガノイド培養技術により生体内の特性を保持したまま培養することに成功し、さらに既存薬ライブラリーによるスクリーニング系を確立した。興味深いことに、ヒット化合物の中に複数の抗真菌薬が含まれていた。 本研究では、まず、抗真菌薬が胆道・膵臓がん細胞の増殖を抑制する分子メカニズムの解明を試みた。樹立した胆道・膵臓がんオルガノイドにアモロルフィン、フェンチコナゾール、イトラコナゾールを添加し、抗真菌薬投与後のマイクロRNAなどのノンコーディング RNAを含む全遺伝子の発現変化をマイクロアレイおよびRNAシークエンスによって網羅的に解析した。解析の結果、抗真菌薬の投与により、Wntシグナルおよびヘッジホッグシグナルに関連する遺伝子の発現に変動が認められた。特に抗真菌薬によるエルゴステロール阻害とヘッジホッグシグナル経路の関与が示唆されており、更なる解析を行っている。 また、抗真菌薬をリード化合物として構造展開を行うことで、胆道・膵臓がん細胞の増殖をより強力に抑制する画期的な低分子医薬品の開発も行っている。アモロルフィンは水溶性が著しく悪いので、水溶性の改善が不可欠となる。従って、合成上比較的容易に変換できる側鎖のアルキル基にカルボキシ基などの水溶性置換基を導入することから誘導体化を開始した。アゾール系抗真菌薬は毒性や薬物代謝酵素(CYP)阻害が強い化合物なので、毒性回避やCYP阻害を抑えるデザインを目指して開発を行っている。 臨床応用に展開するため、これらの抗真菌薬や新たに合成した化合物のin vivoでの増殖抑制効果の検証も行っている。以上の創薬アプローチから、抗真菌薬を基盤とした胆道・膵臓がんに対する革新的な新規治療薬の創出を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、まず、抗真菌薬が胆道・膵臓がん細胞の増殖を抑制する分子メカニズムの解明を試みた。樹立した胆道・膵臓がんオルガノイドにアモロルフィン、フェンチコナゾール、イトラコナゾールを添加し、抗真菌薬投与後のマイクロRNAなどのノンコーディング RNAを含む全遺伝子の発現変化をマイクロアレイおよびRNAシークエンスによって網羅的に解析した。解析の結果、抗真菌薬の投与により、Wntシグナルおよびヘッジホッグシグナルに関連する遺伝子の発現に変動が認められた。特に抗真菌薬によるエルゴステロール阻害とヘッジホッグシグナル経路の関与が示唆されており、更なる解析を行っている。 また、抗真菌薬をリード化合物として構造展開を行うことで、胆道・膵臓がん細胞の増殖をより強力に抑制する画期的な低分子医薬品の開発も行っている。アモロルフィンは水溶性が著しく悪いので、水溶性の改善が不可欠となる。従って、合成上比較的容易に変換できる側鎖のアルキル基にカルボキシ基などの水溶性置換基を導入することから誘導体化を開始した。アゾール系抗真菌薬は毒性や薬物代謝酵素(CYP)阻害が強い化合物なので、毒性回避やCYP阻害を抑えるデザインを目指して開発を行っている。 臨床応用に展開するため、これらの抗真菌薬や新たに合成した化合物のin vivoでの増殖抑制効果の検証も行っている。 以上から、本研究はおおむね当初の計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
抗真菌薬が胆道・膵臓がん細胞の増殖を抑制する分子メカニズムについては、特に抗真菌薬によるエルゴステロール阻害とヘッジホッグ経路の関与に注目し、ヘッジホッグシグナル経路のレポーターアッセイなども行うことで、抗真菌薬が胆道・膵臓がん細胞の増殖を抑制する機序の解明を目指す。 また、抗真菌薬をリード化合物とした構造展開による画期的な低分子医薬品の開発も引き続き進めて行く。アモロルフィンは水溶性が著しく悪いので、水溶性の改善を目指す。アゾール系抗真菌薬は毒性や薬物代謝酵素(CYP)阻害が強い化合物なので、毒性回避やCYP阻害を抑えるデザインを目指して開発を進める。合成した化合物について、オルガノイドを用いた活性評価と同時に、肝ミクロソーム中代謝安定性、水溶性、膜透過性など基本的な物性・薬物動態評価を行うと同時に、特にアゾール系に関してはCYPに対する阻害活性も確認する。優れた特性を示した化合物については、動物を用いた動態および薬効評価を進め、最終的に開発候補品を選定する。 臨床応用に展開するため、これらの抗真菌薬のin vivoでの増殖抑制効果を確認し、非臨床POCの取得を目指す。特に、肝内胆管がんのより生体に近い動物モデルとして、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した胆管がん細胞を免疫不全マウスの脾臓から注入して肝臓に移植させたモデルを作製する。この肝内胆管がんモデルマウスにより、肝臓内の腫瘍の大きさを蛍光で観察することが出来るため、リアルタイムに化合物の抗腫瘍効果を評価することが出来る。以上の創薬アプローチから、抗真菌薬を基盤とした胆道・膵臓がんに対する革新的な新規治療薬を創出する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] An Organoid Biobank of Neuroendocrine Neoplasms Enables Genotype-Phenotype Mapping.2020
Author(s)
Kawasaki K, Toshimitsu K, Matano M, Fujita M, Fujii M, Togasaki K, Ebisudani T, Shimokawa M, Takano A, Takahashi S, Ohta Y, Nanki K, Igarashi R, Ishimaru K, Ishida H, Sukawa Y, Sugimoto S, Saito Y, et al.
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Journal Title
Cell
Volume: 183
Pages: 1420-1435
DOI
Peer Reviewed
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