2021 Fiscal Year Annual Research Report
Maximizing the cancer diagnostic information contained in large extracellular vesicles
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20H03538
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
芝 清隆 公益財団法人がん研究会, がん研究所 蛋白創製研究部, 部長 (40196415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 暁 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器化学療法科, 医長 (50348546)
杉山 裕子 公益財団法人がん研究会, 有明病院 細胞診断部, 部長 (80322634)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞外小胞 / 液性診断 / エクソソーム / エキソソーム / EV / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞が放出する細胞外小胞は、細胞・組織間コミュニケーションにおいて主役的な働きをはたし、特にがんの発生・進展・悪性化に深く関係している。しかしながら、細胞外小胞は極めて多様性に富む集団で、その全体像の把握はまだ十分には解明されていない。細胞外小胞の全容解明は、今後の細胞外小胞研究の発展において極めて重要な位置を占める。これまでの細胞外小胞研究が、小さな細胞外小胞(エクソソームと呼ばれることが多い)にバイアスがかかっていたことを鑑み、本研究では大きな細胞外小胞も含めた、体液中の細胞外小胞の全体像を把握することから始め、これまであまり解析の進んでいなかった「大きな細胞外小胞」からの細胞内診断情報の引き出しの可能性を追究する。 これまでの研究では、ヒト唾液(健常者、および口腔がん患者由来)が含む各種微粒子を差分遠心法で展開し、各分画の含む細胞外小胞マーカーの存在分布を観察したところ、特に大きな細胞外小胞を含む分画で、興味深い発現パターンの動きが観察されることが分かっていた。差分遠心法で調製される分画の、特に大きな細胞外小胞を含む分画には、電子顕微鏡観察からは、いろいろな形態の細胞外小胞が観察され、さらなる差分化が必要である。そこで本研究では、この大きな細胞外小胞を含む分画をさらに、細かく分画することを進めている。一年次、二年次には、密度勾配中を非平衡で遠心移動させた後に10分画に分け、それぞれの分画が含む生体高分子を解析することから、高解像度に大きな細胞外小胞をサブクラスに分離する実験条件の確立に成功している。3年次にはさらに詳細にこれらのサブクラスを解析する。これらの取り組みから、その理解が遅れていた大きな細胞外小胞に関する知識の蓄積が進み、新たな細胞外小胞研究の展開が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
差分遠心法で「0.3K]「2K]「10K」「100K」「SUP」の5分画に分けたヒト唾液の、「2K」分画をさらに詳細に解析するために、この「2K」分画を、密度勾配メディア中を、(密度に関しては)非平衡条件下で移動させ、10分画に分けた。この10分画が含む、タンパク質、小さなRNA分子、細菌由来ゲノムDNA、ヒトミトコンドリアゲノム由来DNAを解析した。特にタンパク質に関しては、ウェスタンブロッティングに加えて、網羅的なプロテオーム解析をおこない、既報の細胞外小胞に含まれるとされているタンパク質との比較をおこない、唾液の「2K」分画に含まれるタンパク質の特徴を明らかにした。 また、小さな細胞外小胞のマーカーとしてしばしば使われる、CD81が、「2K」分画において、易動度の遅い分子種と、速い分子種に相互排他的に分かれることを発見した。易動度の遅い分子種は、いわゆる糖鎖修飾によるものではないことを、糖鎖分解実験などから確認した。このように、想定外の興味深い結果も得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020-21年度で確立した、「大きな細胞外小胞を含む分画を解像度良く解析する解析手法」を用い、2022年度は次のような研究を計画している。 (1)「2K」分画をさらに非平衡条件下で移動させ細かく差分化した各分画が含むタンパク質の分布パターンを、時間軸を考慮にいれたパターン解析をおこない、「2K」分画が含むタンパク質のサブクラス分けをおこなう。得られた結果をオントロジー解析のデータを比較することから、「2K」分画に含まれる、細胞外小胞タイプとその生成経路を考察していく。 (2)(1)で開発する時間軸を考慮にいれたパターン解析の技法を、過去に取得した平衡密度勾配実験のデータにも適用し、「平衡状態に達していない生体高分子」を解析できる新しい手法として完成させる。細胞外小胞の平衡密度勾配分離実験は、多くの場合は「非平衡」の試料を観察しているのが現実である。細胞外小胞分析の新たな手法の確立をめざした、2020-21年度の成果かをさらに発展させる派生成果となる。 (3)「2K」分画に特に多く観察される、易動度の低い細胞外小胞マーカーについて、みかけ上分子量が大きくなる原因を生化学的に明らかにする。いわゆるテトラスパニン系タンパク質のシャペロンとしての機能と、それが関係した細胞外小胞生成経路の同定につながる、独自性の強い研究である。 (4)光学顕微鏡で観察可能な大きな細胞外小胞の同定と、口腔内疾患との関連性について引き続き、探索を進める。
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Research Products
(4 results)