2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of cancer diversity mechanism by analysis of phosphorylation signal using biopsy tissue and application to precision medicine
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20H03544
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
朝長 毅 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, 上級研究員 (80227644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 友美 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 プロテオームリサーチプロジェクト, 特任研究員 (10333353)
足立 淳 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, プロジェクトリーダー (20437255)
朴 成和 東京大学, 医科学研究所, 教授 (50505948)
長山 聡 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 医長 (70362499)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リン酸化プロテオーム解析 / 生検組織 / がん多様性 / 精密医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のがんのオミックス解析から明らかなように、がんは多様であり、個人個人によって性質が異なることはもちろんのこと、転移、再発、治療によって性質が変化する。従って、がんの薬物療法は、個人個人やその時々によって最適な治療法が変わってくるはずである。ところが、現在のがんの薬物療法は、がんの多様性に即した個別化医療にはほど遠い。また、分子標的薬は多くの場合1年以内に不応となり二次耐性が大きな問題となっているが、治療抵抗性の機序の解明はほとんど進んでいない。 以上の背景のもと、本研究では、患者のがん生検組織もしくはPDX移植腫瘍を用いて、大規模なリン酸化プロテオーム解析とバイオインフォマティクス解析を行う。その定量データをもとに、がんシグナルパスウェイとパスウェイ上のキナーゼ活性を網羅的に推定することで、がんの多様性を理解し、患者の層別化と個人個人に対して最適な治療法の提案をすることを目的とする。 2021年度は、昨年度研究分担者国立がん研究センター中央病院消化器内科の朴により収集された胃がん・大腸がん生検検体および研究分担者のがん研有明病院長山により収集された大腸がん初発時と化学療法後再発時の手術切除組織を用いて、大規模リン酸化プロテオーム解析を行った。その結果、胃がん症例が3つのサブタイプに分類されること、それぞれのサブタイプは共通のキナーゼの活性化もしくは不活性化が認められることを見出し、それぞれのサブタイプに特定の阻害剤が有用である可能性が示唆された。また、進行大腸がんの化学療法中に再発を認めた予後不良群では、ある特定のキナーゼが活性化されていること、そのキナーゼの上流の因子の阻害剤が進行大腸がん予後不良群に有用である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画は1.胃がん・大腸がん生検組織および手術切除組織の収集 2.がん組織を用いたPDXの作製 3.がん組織の大規模リン酸化プロテオーム解析によるシグナルパスウェイおよび活性化キナーゼ探索であった。 1については、胃がん85症例、大腸がんは109症例のがん部と非がん部の生検組織および大腸がん初発時と化学療法後再発時の手術切除組織24検体を収集した。2については、胃がん・大腸がんの生検組織や手術切除組織からPDX作製が可能であることを確認した。3については、収集された胃がん・大腸がん生検組織および大腸がん初発時と化学療法後再発時の手術切除組織を用いた大規模リン酸化プロテオーム解析をほぼ完了させ、以下の結果を得た。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。 胃がん85症例の生検組織の大規模リン酸化プロテオーム解析の結果、胃がん症例は3つのサブタイプに分類されることがわかった。サブタイプ1では細胞周期関連キナーゼ、サブタイプ2では上皮間葉転換(EMT)関連キナーゼ群が活性化しており、それぞれのキナーゼ阻害剤が治療法として有用であることが示唆された。また、サブタイプ3では、DNA損傷応答シグナル関連キナーゼ群が不活性化していることから、遺伝子変異量(TMD)が高いことが示唆され、免疫チェックポイント阻害剤が有用であると考えられた。 進行大腸がん化学療法後再発時の手術切除組織を用いた大規模リン酸化プロテオーム解析の結果、化学療法中に再発を認めた予後不良群ではキナーゼXが再発時の組織で高値を示すことがわかった。また、キナーゼXの活性が高値を示す大腸がん細胞株は、キナーゼXの上流キナーゼの阻害剤に感受性を示すことが明らかとなり、その阻害剤が進行大腸がんの中でも予後不良群に有用である可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
1.大腸がん生検組織の大規模リン酸化プロテオーム解析によるシグナルパスウェイおよびキナーゼ活性定量(研究代表者:朝長、分担者:足立、朴) 昨年度に引き続き、大腸がん生検組織の大規模リン酸化プロテオーム解析を行い、大腸がんのサブタイプ分類による患者層別化を行う。同時に、推定された活性化キナーゼから各サブタイプおよび個人個人に対して最適な治療法の探索を行う。 2.PDXを用いたキナーゼ活性の検証と機能解析(研究協力者:軍司) 昨年度、胃がん生検組織および化学療法後再発時の手術切除組織の大規模リン酸化プロテオーム解析で同定された活性化キナーゼが、それぞれのがんの増殖に関与しているかどうか、またキナーゼ阻害剤が治療法として有用かどうかPDXを用いて検証する。 3.リン酸化マーカー群を集積したリン酸化診断パネルの作製と精密医療への応用(朝長、足立、朴、長山) 上記の結果で得られた患者層別化に有用なマーカー群を集積したリン酸化診断パネルを作製し、患者層別化および個人に最適な治療法、特にキナーゼ阻害剤を臨床医に提案する。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Temporal dynamics from phosphoproteomics using endoscopic biopsy specimens provides new therapeutic targets in stage IV gastric cancer.2022
Author(s)
Hirano H, Abe Y, Nojima Y, Aoki M, Shoji H, Isoyama J, Honda K, Boku N, Mizuguchi K, Tomonaga T, Adachi J
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Journal Title
Sci Rep
Volume: 12
Pages: 4419
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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