2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H03563
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片山 雄太 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (70725085)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 自閉症 / CHD8 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症(自閉症)はコミュニケーション障害や行動の限局性を特徴とする発達障害であり、1%を越える高い有病率から近年特に注目を集める精神疾患の1つである。CHD8は自閉症患者で最も変異率の高い遺伝子の一つとして注目を集めているが、申請者はマウスに同様の遺伝子変異を導入することで自閉症様の行動異常を再現したモデルマウスの作製に成功し、その自閉症発症メカニズムについて報告した。本研究はCHD8ヘテロ欠損マウスを自閉症モデルマウスとして用いて、シングルセルmRNAseqや細胞種特異的CHD8変異マウスを作製して解析することで、自閉症の発症メカニズムを分子レベル・細胞レベルから理解することを目的としており、さらに明らかになった発症メカニズムを基づいた効果的な治療法の開発を目指す。 2020年度は以前から解析を進めていたオリゴデンドロサイトにおけるCHD8のヘテロ欠損が自閉症の原因となることを明らかにした研究を学術誌に報告し受理された [Kawamura, Katayama et al., Hum. Mol. Genet. 29: 1274-1291 (2020)]。さらにオリゴデンドロサイトでCHD8をヘテロ欠損したマウスの脳構造と機能への影響をfMRIを用いて検証した成果を報告した [Kawamura et al., Mol. Brain 13: 160 (2020)]。また、CHD8は小脳顆粒細胞の分化に重要な役割を担っていることを発見し、CHD8の遺伝子変異はマウスの小脳発生が障害されることで運動機能に影響することを報告した [Kawamura, Katayama et al., Cell reports 35: 108932 (2021)]。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小脳顆粒細胞特異的にCHD8の遺伝子変異を導入したマウスは小脳の構造以上を示すものの、自閉症様の行動異常は見られなことから小脳の異常はCHD8遺伝子変異による自閉症の発症には直接関与していないと考えられる。また、オリゴデンドロサイト特異的にCHD8を欠損したマウスは全身でCHD8をヘテロ欠損したマウスで見られる自閉症様の行動異常の全てを再現するわけではないことから、オリゴデンドロサイトの異常に加えて神経細胞の異常が自閉症の発症に関わっていると考えており、現在神経細胞の異常に注目して解析を進めている。このように計画に従って責任細胞種の絞り込みが順調に進んでいる。 また予定していたシングルセルRNA-seq解析のデータ取得と解析をおこない、CHD8の遺伝子変異が興奮性神経と抑制性神経の両方に影響を与えることを示唆するデータを得ている。そこで神経細胞の異常が自閉症に発症に関わることを検証するため、神経細胞特異的CHD8変異マウスを作製して解析を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
神経細胞特異的CHD8変異マウスの電気生理学的解析と行動解析によって、CHD8遺伝子変異による神経細胞の機能変化と自閉症の関係を明らかにする。この結果によってCHD8遺伝子変異による自閉症の発症に関与する神経細胞種を同定することで、自閉症の理解を深める。また、オリゴデンドロサイトが治療ターゲットとして有力なことから、オリゴデンドロサイトの機能を改善する薬剤を用いた治療実験をおこなう。
|
Research Products
(5 results)