2020 Fiscal Year Annual Research Report
全身疾患に随伴するうつ症状・認知機能低下の共通メカニズム解明と治療への応用
Project/Area Number |
20H03577
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中曽 一裕 鳥取大学, 医学部, 准教授 (30379648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 正明 鳥取大学, 医学部, 准教授 (40346367)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | xCT / グルタミン酸 / ミクログリア / うつ / 認知機能低下 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,種々の疾患に随伴して出現するうつ症状や認知機能低下の共通メカニズムを明らかにし,将来的な臨床応用を想定した,既存治療には無い特性を持つ新規治療の基盤確立を目指すものである. <細胞実験>培養ミクログリアを用い,アミロイドβ(Aβ),α-synuclein,MPTPなどの刺激によるxCTの発現量の変化を検討した.その結果,ミクログリアが活性化される条件ではxCT発現量が増加することが明らかになった.DNAアレイ,RT-PCR,ウエスタンブロットにより検討した. <動物実験>動物モデルとして,①ビタミンE欠乏モデルマウス,②MPTP投与パーキンソン病モデルマウス,③アルツハイマー病マウスにおいて,xCTの関与を検討中である.①に関しては,長期ビタミンE欠乏による認知機能低下,自発活動性低下は,xCT欠失マウスでは生じにくいことを明らかにした.また,ビタミンE欠乏のマウス脳では,ミクログリアおよびアストロサイトにxCTの発現を認め,単なる酸化ストレスだけではなく,xCTから放出されるグルタミン酸も重要であることが示唆された.②についてはMPTP投与による自発性運動低下がxCT欠失マウスでは軽減されることを見出し,MPTPによるパーキンソン病様症状には,神経細胞だけではなく,ミクログリアxCTも関与していることが明らかになりつつある.③については,遺伝子改変によるアルツハイマー病マウスとxCT欠失マウスの交配により,xCTの関与を検討中である.また,xCT阻害剤であるするファサラジンの効果も検討中である. <ミクログリア特異的xCT欠失マウスの作製>一部外部委託により,ミクログリア選択的にxCT遺伝子が欠失するコンディショナルノックアウトマウスを作成した.現在F1世代が得られており,今後繁殖による個体数確保の後,うつ症状や認知機能への影響を検討する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞実験,動物実験は概ね予定通りに進捗している. 本申請課題の前半で最も困難であったミクログリア特異的xCT欠失マウスの作成に成功しており,本プロジェクトは今のところ順調に進んでいると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は動物モデルを用いた検討の比率を高める.現在進行中の動物モデル(ビタミンE欠乏老化促進モデル,MPTPパーキンソン病モデル,アルツハイマー病モデルマウス)に加え,炎症病態によるうつ症状,認知機能低下のモデルををxCT欠失マウスを用いて検討する予定である. 現在,作成後繁殖中のミクログリア特異的xCT欠失マウスの個体数が十分に得られた後,上記疾患モデルをコンディショナルノックアウトを用いて同様に検討する. 治療応用のための研究ステップとして,xCT機能を容易に検討できる細胞の確立,xCT阻害物質のスクリーニングを徐々に開始する予定.
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