2020 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム進化予測による薬剤耐性菌発生防止に向けた研究
Project/Area Number |
20H03579
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
相原 正宗 九州大学, 医学研究院, 講師 (30748843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松島 雄一 九州大学, 医学研究院, 助教 (20571342)
後藤 恭宏 九州大学, 医学研究院, 助教 (20558358)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 薬剤耐性 / 細菌 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、医療現場で用いられている抗菌薬に対し抵抗性を示す薬剤耐性菌はヒトの健康を脅やかす存在として広く認識されつつある。抗菌薬ストレス下における細菌は外来性の薬剤耐性遺伝子を取り込むことや、自らのゲノムを変化させることで薬剤耐性を獲得し、自身の置かれた環境に適合している。臨床では抗菌薬適正使用が励行されているものの、薬剤耐性菌は分離され続けており、いかにして薬剤耐性菌の発生および拡散を抑え込むかについて試行錯誤を積み重ねる必要がある。本研究では抗菌薬を投与している患者から連続して分離され、経時的に薬剤耐性を獲得した臨床分離細菌を相互比較することで、薬剤耐性に至る過程を明らかにし、薬剤耐性菌発生に寄与することを目的としている。対象となる複数の症例から菌株を収集し、そのうち2症例・計7菌株のクレブシエラニューモニエを重点的に解析した。どちらの症例においても、対象菌株からゲノムDNAを抽出し、全ゲノムシーケンスを施行した。1症例では各菌株のドラフトゲノムを、もう1症例では各菌株のコンプリートゲノムを構築した。それらのゲノム配列を用いて同一症例内でゲノム配列の相互比較を行い、それぞれの菌株の関係性や遺伝子配列の変化を見出した。どちらの症例においても、それぞれ1つのクローンがゲノム変化を積み重ねることで薬剤耐性へと進化していることを明らかにした。また、変化のあった遺伝子の中から、薬剤耐性およびそれに付随した患者体内の生存に寄与することが想定される因子を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り、抗菌薬を投与している患者から連続して分離され、経時的に薬剤耐性を獲得した臨床分離細菌を複数症例から得ることができた。また各症例内でゲノムの相互比較を行い、薬剤耐性および患者体内での生存に寄与するゲノム進化の過程を解析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き抗菌薬を投与している患者から連続して採取される細菌の収集を行う。解析症例数を増加させ、薬剤耐性および患者体内での生存に寄与するゲノム変化の解析を行い、症例間で共通する薬剤耐性に関与する因子の変化の過程を明らかにする。また得られた知見を大規模解析につなげるための菌株収集を行う。
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