2020 Fiscal Year Annual Research Report
前頭側頭型認知症における「RNA代謝リレー障害」仮説の実証
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20H03602
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 康治 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40775318)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | C9orf72 / RNA分解 / RAN翻訳 / リピート病 / 精神疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
C9orf72のイントロンに存在するGGGGCCリピートの異常伸長は前頭側頭型認知症(前頭側頭葉変性症)および類縁疾患である運動ニューロン病を引き起こす。これまで我々はリピートに由来するRNA転写産物がRAN翻訳とよばれる異常翻訳を受け、それにより産生されるジペプチドリピート(DPR)が患者脳に蓄積することを明らかにしてきた。本研究ではこのDPRタンパクの源であるリピートRNAの蓄積機序の詳しい仕組みを明らかにし、FTDの分子病態を解明するとともに、新規治療標的の同定へと繋げる。我々は、最近リピートRNAの安定性に関わるリボ核タンパク質やリピートRNAの分解酵素を同定することにより、DPRタンパクの源となるリピートRNAの蓄積機序を明らかにしてきた。特に核小体におもに局在するEXOSC10は、自身のRNase活性とは独立してRNAエクソソーム複合体への基質取り込みを促進し、もう一つのRNase活性サブユニットであるDIS3で のRNA分解を促進する。本研究では、これらの知見を統合的に発展させ、「リボ核タンパクに結合したRNAというバトンをRNA分解へとリレーする機序やその障害」を明らかにし、FTDの分子病態を解明するとともに、新規治療標的の同定へと繋げる。そのために現在はリピートRNAに選択的に結合すると考えられるリボ核タンパク質のinteractomeの網羅的同定の準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EXOSC10は、自身のRNase活性とは独立してRNAエクソソーム複合体への基質取り込みを促進し、もう一つのRNase活性サブユニットであるDIS3で のRNA分解を促進する。その機序として、本研究ではEXOSC10のカルボキシ末端に位置する「Lasso(投げ縄)ドメイン」に着目する。Lassoドメインの欠損によりRNAエクソソーム複合体のRNA分解活性は低下する。申請者は天然変性領域であるLassoドメインが同じく天然変性領域を持つRNP顆粒を捕捉し、RNPに結合したRNAのRNAエクソソーム複合体への取り込みを促進すると考えた。本研究では、これを実験的に証明するため、APEX法を用いて、Lassoドメインと相互作用するタンパクを網羅的に同定する。そして、同定したタンパクがリピートRNA分解に及ぼす影響を細胞生物学的手法とin vitro RNA分解アッセイ系により実験的に検証していく。そのためにまず、Lassoドメインの欠失変異EXOSC10を作成し、リピートRNA分解活性に違いが生じるかどうかを確認した。続いて野生型EXOSC10とLassoドメイン欠失EXOSC10の両者ともにカルボキシ末端にAPEXを付加した誘導安定発現細胞系を構築した。また結合相手としてのRNA結合蛋白にAPEXを付加したコンストラクトを作成し、APEX法によるinter actome検出の準備を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度作成した特定のRNA結合タンパク質のカルボキシ末端にアスコルビン酸ペルオキシダーゼであるAPEXを付加したコンストラクトを培養細胞に発現させ、最適な反応時間、ビオチン供与体濃度、透析による精製方法などの条件検討を行って、細胞内ビオチン化アッセイの条件設定を行う。ビオチン化効率の検証には、細胞ライセートを電気泳動し、アビジン標識したHRPを用いて検出し、評価する。さらにビオチン化タンパク質をpull downし、精製するための手法(ビーズの洗浄方法など)を確立する。そして、pull downされたタンパク質を電気泳動で展開し、銀染色を行って、当該RNA結合タンパク質に選択的に結合するタンパク質を見出し、LC-MS/MS法を用いて網羅的に同定していく。
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