2020 Fiscal Year Annual Research Report
幼少期の不遇な体験を持つうつ病の神経回路病態に基づく治療・予防に関わる基盤研究
Project/Area Number |
20H03603
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡本 泰昌 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (70314763)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 剛 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (10457286)
淵上 学 広島大学, 医系科学研究科(医), 講師 (40403571)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | うつ病 / 幼少期ストレス / fMRI / うつ病モデルラット / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
課題1)では、幼少期の不遇な体験を経たうつ病患者に特有の脳活動パターンを抽出するため、うつ病患者70名に対して、質問紙調査と安静時fMRIの撮像を行った。質問紙調査は、幼少時に受けた虐待やトラウマの程度を評価するChild Abuse and Trauma Scale(CATS)、および最近の出来事の影響を評価するThe Life Experiences Survey(LES)を行った。得られた安静時fMRI画像から脳活動の指標としてfractional amplitude of low-frequency fluctuation(fALFF)の値をボクセル毎に算出し、fALFFを目的変数、CATS、LES、年齢、性別を説明変数とした重回帰分析を行い、CATSの点数が脳活動と関連する領域を検証した。その結果、右島、扁桃体、海馬の脳活動はCATSと正の相関を示し、左下前頭回及び中前頭回の脳活動はCATSと負の相関を示した。 課題2)では、母子分離(NI)ラットにおける神経回路の構造的異常の解明を目的とし、うつ病で障害される脳機能である報酬や嫌悪刺激に対する行動反応に機能する脳部位である腹側淡蒼球(VP)領域に着目し、その細胞構成を評価した。今回は抑制性神経細胞種であるGABA陽性細胞のうち約半数を占めるエンケファリン陽性細胞と興奮性神経細胞種であるVGLUT2陽性細胞の細胞数を測定した。NIラットのVP領域ではエンケファリン陽性細胞数に有意な変化を認めなかった、一方でVGLUT2陽性細胞数は減少を認めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヒト臨床研究では、うつ病の中でも幼少期の不遇な体験を経た群に特有の異常な脳活動パターンを抽出した。モデル動物研究では、幼少期ストレス後のうつ病モデルラットの腹側淡蒼球において興奮性神経細胞の減少を見出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、課題3)および4)として幼少期ストレス後のうつ病モデルラットに対して、生育環境介入や課題2)で特定した異常であるVP領域の細胞種特異的な神経活動操作による症状の再現やNIラットにおける活動操作を用いた回復効果についての検討を進める。また、課題5)として、すでに倫理審査承認を得て健常人およびうつ病患者を対象とした探索的臨床研究に着手しており、課題1)で抽出した異常な脳活動パターンを対象に、rTMS 法あるいはニューロフィードバック法などの神経活動操作法による幼少期の不遇な体験を経たうつ病の治療への応用を開始する。
|