2020 Fiscal Year Annual Research Report
小児期栄養環境が形づくる髄鞘構造とその精神症状への効果の検討
Project/Area Number |
20H03604
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
牧之段 学 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (00510182)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗本 一基 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20415152)
鳥塚 通弘 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (20588529)
山室 和彦 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60526721)
末次 志郎 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70345031)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 栄養 / 髄鞘 / 社会性 / 脂質 / オレイン酸 / エライジン酸 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
髄鞘形成に及ぼす小児期栄養環境の影響を調べるために、本課題では栄養のうち特に髄鞘の約80%を構成する脂質栄養に着目した。近年オリーブオイル摂取の心身への好影響が報告されているが、オリーブオイルを構成する主要な脂肪酸はオレイン酸である。一方、マーガリン摂取の心身への悪影響が報告されており、マーガリンはオレイン酸のトランス体であるエライジン酸を多く含んでいる。また、小児期に髄鞘に取り込まれた脂肪酸は長期にわたり保存されることが報告されており、小児期に摂取する脂肪酸の種類によって成人の髄鞘を構成する脂肪酸組成が決定づけられることが示唆されている。これらの知見を受け、本年度には、オレイン酸主体の給餌と、オレイン酸の半量をエライジン酸に置換した餌をマウスの幼若期(生後11日目から45日目)に投与し、成体マウス(生後95日目)の髄鞘を構成する脂肪酸組成を質量分析によって解析した。髄鞘成分が主体である脳梁を研究対象とした。予想通り、オレイン酸投与群のマウス脳梁ではエライジン酸は確認できなかったが、エライジン酸を投与されたマウス脳梁にはエライジン酸が残存していた。同マウスの社会行動を3-chamber testで解析したところ、エライジン酸投与群ではオレイン酸投与群と比べて社会性が低下していた。しかしながら、オープンフィールドテストにおける行動量や中央エリアへの侵入率は2群間で有意差なく、マウスの活動性や不安には差がないことが示された。また、脳梁機能を化学遺伝学的に特異的に阻害したところ、同様に社会性が低下し、脳梁機能障害のみで社会性が低下することを確認した。これらの結果から、残存するエライジン酸が髄鞘形成に何らかの影響を与えている可能性が示されたため、次年度には脳梁に加えて社会性を司る前頭前野の髄鞘を構成する脂肪酸についても調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
微量脂質質量分析の条件設定に時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
幼若期の脂質栄養環境の相違が長期にわたり脳梁の構成脂質成分を規定することが明らかになったため、脳梁の主成分である髄鞘の形態と機能を調べ、行動異常との関係を検討していく。また、エライジン酸を投与したマウスの活動量や不安はオレイン酸投与マウスと相違なく、社会性のみが顕著に障害されることが明らかとなったため、今後は前頭前野の髄鞘構造や機能も詳細に解析していく予定とする。
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