2020 Fiscal Year Annual Research Report
バイオフィジックスの論理的分子デザインに基づいた安全なCAR-T細胞の開発
Project/Area Number |
20H03639
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中沢 洋三 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (60397312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅澤 公二 信州大学, 総合理工学研究科, 助教 (00609258)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CAR-T細胞 / キメラ抗原受容体 / 分子デザイン / バイオフィジックス / 生物物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工T細胞受容体であるキメラ抗原受容体(CAR)を発現させた遺伝子改変T細胞は、標的となるがん細胞を特異的かつ強力に殺傷することから、様々な固形がんに対するCAR-T細胞の臨床開発が期待されている。しかし、新規CAR-T細胞の開発においては、オンターゲット・オフ腫瘍副作用(標的タンパク質を発現する正常組織・臓器を障害する副作用)とオフターゲット副作用(標的以外のタンパク質に結合し正常組織・臓器を障害する副作用)が大きな課題となる。 研究代表者は、世界で初めて非ウイルス遺伝子改変技術を用いたCAR-T細胞の製造法を確立し、さらにCARの抗原結合領域に、従来の一本鎖抗体ではなく、標的抗原(増殖因子受容体)に対する内因性リガンドを用いる独自のリガンド型CAR-T細胞技術を開発してきた。その成果の一部は既に治験においてテストされている。リガンド型CAR-T細胞には、完全ヒト蛋白由来、低設計コスト、最適な抗原親和性という長所がある。その一方で、リガンドの種類によっては標的外抗原にも弱い親和性を有するため、オフターゲット副作用のリスクを有するという短所もある。 本研究では、固形がんに対する安全な次世代CAR-T細胞療法を提案するために、生物物理学(バイオフィジックス)によりリガンド変異体を分子デザインし、優れた抗腫瘍活性を有しながらも、オンターゲット・オフ腫瘍副作用やオフターゲット副作用の少ない革新的なリガンド型CAR-T細胞の開発を目指す。 令和2年度には、まず、複数の固形腫瘍細胞株に細胞傷害活性を有する2種類の新規リガンド型CAR-T細胞("X" CAR-T細胞と"Y" CAR-T細胞)を開発した。次に、"X" CARについては5種類、"Y" CARについては3種類の安全性を高める工夫を付与したリガンド変異体を設計した。現在、野生リガンド型CAR-T細胞と変異リガンド型CAR-T細胞の効果を比較している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は当初、1種類の変異リガンド型CAR-T細胞を設計する計画であったが、2種類の変異リガンド型CAR-T細胞の設計に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に設計した2種類のリガンド型CAR-T細胞およびそれぞれの変異リガンド型CAR-T細胞の効果をin vitroおよびin vivoマウス実験で比較検証する。さらに、3種類目のリガンド型CAR-T細胞の設計に取り組む。
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