2020 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト神経筋接合部モデルを用いた先天性筋無力症候群などの病態解析
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20H03642
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
斎藤 潤 京都大学, iPS細胞研究所, 准教授 (90535486)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経筋接合部 / 多能性幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経筋接合部(Neuromuscular junction: NMJ) は運動神経と筋組織の接合部であり、シナプスが形成されている。NMJの機能異常は様々な疾患を引き起こすが、なかでも先天性筋無力症候群(congenital myasthenic syndrome: CMS)をはじめとする先天性疾患は特異的治療法が存在しないものも多く、その病態解明と治療法開発は重要である。申請者らは、2019年度までの科研費基盤Bにおいて、ヒト多能性幹細胞から運動神経や骨格筋などを同時に誘導し、機能的・形態的に成熟したNMJを構築する系を発明した(Lin CY, JCI insight 2019)。本申請では、この分化系を活用し、CMSや脊髄性筋萎縮症を対象疾患として、ヒトNMJ病変の病態解明を目標とする。 本年度は、①脊髄性筋萎縮症患者さんのiPS細胞にSMNを強制発現することにより、修復モデルを、②アセチルコリン受容体εサブユニットをノックアウトすることにより先天性筋無力症候群のモデルを作製した。①ではSMNの発現回復を確認した。②ではジェノタイピングを行った。それぞれのモデルについて、iPS細胞から骨格筋細胞、神経筋接合部への分化を行った。その結果、いずれのモデルにおいても、神経筋接合部を作製すると、疾患モデル側でその数が減少していることが確認できた。 以上より、本年度の計画は予定通り進んでおり、次年度に神経筋接合部病態の詳細な解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績欄に示した通り、当初の本年度目標であった疾患モデルの構築に成功した。 このため、進捗は予定の100%と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り研究が進捗しているので、引き続き当初の計画に沿って研究を進める。 先天性筋無力症候群について:樹立したiPS細胞の性状評価を行い、MYOD1遺伝子を導入し、NMJへの分化を開始する。NMJの分化効率は免疫染色(Synaptic vesicle 2+αBTX)を用いて行う(すでに手法は確立)。効率が安定していることを確認の上、後述のNMJの機能評価を実施する。 脊髄性筋萎縮症について: SMN欠損細胞では骨格筋特異的に細胞死が誘導されることを見出した(Ikenaka, unpublished)が、SMA患者さんの組織切片で骨格筋のミトコンドリア関連分子の発現低下が認められることから(Ripolone, JAMA Neurol 2015)、細胞死のメカニズムを細胞内エネルギー代謝やミトコンドリア機能に着目して解析する。NMJモデルでは、NMJの機能評価を行う。
NMJの機能評価について:以下の項目を実施予定である。I.NMJ依存性の筋収縮能:ソニー(株)と共同開発した筋収縮能の測定機器(研究室内に設置)を用いて、疾患iPS細胞と対照との間の筋収縮能(筋収縮の加速度・筋収縮の頻度)を観測する。成熟NMJの筋収縮能評価には光遺伝学的手法を用いる。神経細胞にシナプシンプロモーター下に光作動性チャネルを発現するベクターを導入し、光刺激により神経細胞を興奮させ、筋収縮を評価する。II.電子顕微鏡による微細構造観察:シナプス前・後の詳細な構造を電子顕微鏡で観察し、疾患群での差異を見出す。III.細胞内カルシウム濃度の変動:カルシウム指示薬を筋細胞に導入し、筋収縮能の評価と同様の刺激を用いて細胞内カルシウムない濃度の変動を観察する。これは筋収縮能との同時観察が可能であり、骨格筋の興奮と収縮のカップリングが適切に行われているかを評価することが出来る。
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Research Products
(2 results)