2022 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト神経筋接合部モデルを用いた先天性筋無力症候群などの病態解析
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20H03642
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
斎藤 潤 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (90535486)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経筋接合部 / 多能性幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
先天性筋無力症(CMS)及び脊髄性筋萎縮症(SMA)を対象としたNMJ病変の疾患モデルを構築している。 CMSについて、ACRE (アセチルコリン受容体εサブユニット)をノックアウトしたiPS細胞を神経筋接合部に分化誘導したところ、神経筋接合部構成能の低下を認めた。またこれに関連して筋収縮能の低下を認めたため、病態再現に成功したと考え、現在論文投稿準備中である。 SMAの原因遺伝子SMNが骨格筋で欠損することによる筋萎縮のメカニズムは不明であったが、我々は、SMA患者さん由来の疾患特異的iPS細胞およびSMN欠損マウス筋芽細胞を用いて研究を行い、SMAにおいて、骨格筋の形成過程でmiR-1およびmiR-206の発現量が低下することで、ミトコンドリアの機能異常が引き起こされることを明らかにした。加えて、SMNがmiR-1およびmiR-206の転写開始点上流に結合していることを見出し、SMNがこれらの発現調節に関与している可能性を示した。また、SMAモデルマウスより単離した骨格筋幹細胞にmiR-1およびmiR-206を導入し筋管細胞へと分化誘導した場合、ミトコンドリアの機能、筋管細胞形成、骨格筋の収縮能が改善することがわかった。以上を取りまとめ、査読付き英文誌に投稿し、採択された。以上より、本研究は、SMAの骨格筋病変の発症機構の1つを明らかにした。今後、骨格筋を標的とした新規治療法の開発に繋がることが期待される成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績欄に示した通り、当初の本年度目標であった疾患モデルの解析が進捗し、論文発表も行えた。このため、進捗は予定の100%と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進捗しているため、引き続き、CMS及びSMAを対象としたNMJ病変の疾患モデルを用いて解析を進める。 CMSに関しては、データの取りまとめと論文作成を進め、研究期間内での論文投稿を目指す。 SMAについては、骨格筋におけるSMNの役割を明らかにしたが、さらに筋分化過程におけるSMNのゲノム上での機能にフォーカスし、SMN依存性の転写制御機構の解析を進める。具体的には、新生RNA鎖の産生量やスプライシングにSMNが与える影響を評価し、SMNとともにゲノム上で協調して働いている因子(タンパクやRNA)を探索する。また、SMAモデルiPS細胞を用いてNMJを構築させ、NMJモデルにおけるmiRNAの効果を検証する。 以上により、CMSやSMAにおけるNMJモデルの構築及びNMJモデルの解析による病態解明を進めることにより、将来的にこれらの疾患の病態生理の理解を深め、治療法開発につなげることが出来る成果を得ることを目標とする。
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