2020 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of animal disease models for intractable pediatric diseases due to defects of RNA metabolism and development of new therapeutics
Project/Area Number |
20H03644
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
花田 俊勝 大分大学, 医学部, 教授 (10363350)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花田 礼子 大分大学, 医学部, 教授 (00343707)
西田 欣広 大分大学, 医学部, 准教授 (10336274)
疋田 貴俊 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (70421378)
井原 健二 大分大学, 医学部, 教授 (80294932)
白石 裕士 大分大学, 医学部, 准教授 (80452837)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | RNAエキソソーム / EXOSC2 / LARS / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、RNA制御機構に関与するEXOSC2とLARSについて詳細な解析を行った。EXOSC2は、RNAの分解や修飾を行うRNAエキソソーム複合体の構成分子であり、本遺伝子の変異が精神遅滞や小眼球症などを伴う神経変性症候群の発症原因になることが報告されていた。その発症機構を解明するために、EXOSC2遺伝子欠損ゼブラフィッシュを樹立し解析したところ、mRNAの分解代謝が滞るため細胞内におけるヌクレオチドバランスの不均衡が生じ、そのためオートファジーが亢進することを発見し報告した(YatsukaらBBRC, 2020)。LARS(ロイシルtRNA合成酵素)は、アミノ酸のロイシンを対応する運搬RNAに付加する機能を持つとともに細胞内のロイシン濃度を探知することでmTORCを介したエネルギー調節を行うセンサータンパク質としての機能をもつ。またヒトLARS遺伝子変異は小児肝不全の原因としても報告されているが、その発症機構は明らかとなっていない。我々は、LARS遺伝子欠損ゼブラフィッシュを解析することにより、LARSの機能不全により全身性にオートファジーの亢進が生じ、特に肝臓では顕著であることを示した(InoueらScientific Reports, 2021)。さらに希少難治性疾患における遺伝子変異の病的意義を解析するため、大分大学医学部附属病院小児科において遺伝学的検査を積極的に実施し、今年度は約30例(全エクソーム解析は5例)を解析した。これらの新規遺伝子変異は、ゼブラフィッシュやマウスにおいても種間の保存性があることを確認した。今後、これらの遺伝子についてゲノム編集によるノックアウトおよびノックインモデル動物の作製を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つのRNA制御遺伝子EXOSC2とLARSの機能解析について、その疾患モデルゼブラフィッシュを作製し病態機構の解明を目指し、論文として報告することができた。マウスモデルとしてRNA kinase分子CLP1のノックインマウスモデルを樹立した。これはトルコで発見された遺伝子変異と同様の点変異を導入したマウスであり、ヒトと同じく小頭症と運動失調を発症した。大分大学動物実験施設の改修と重なり実験の遅延が懸念されたが、速やかに施設外飼育環境を整え、順調に解析を進めることができ、現在投稿論文を準備中である。他の希少難病における新たな遺伝子変異についても大分大学附属病院との共同研究にてデータが蓄積されつつあり、すでにいくつかの遺伝子についてはゼブラフィッシュの作製を開始した。また、詳細な病態機構を解析するため、細胞外へ流出するATPあるいはADOを感知して炎症動態を可視化するセンサーゼブラフィッシュ、生体のpHの変化を時空間的に可視化できるセンサーフィッシュの樹立にも成功した。これらを用いてより詳細な病態機構の解明を目指す。コロナ禍のため、Zebrafish International Resource Center (ZIRC)からのゼブラフィッシュリソースの遅延が生じたが、現在は通常の状態に戻りつつある。コロナ禍により生じた遅れを取り戻すべく、研究のスピードアップを図っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
大分大学附属病院との共同研究により発見された疾患の原因となる遺伝子候補について、全身性エリテマトーデス(PIK3CD遺伝子)、ブラウ症候群(NOD2遺伝子変異)、縁位尿細管性アシドーシス(ATP6V1B1遺伝子)、Wolfram様症候群(WFS1遺伝子)、肝紫斑病(MTM1遺伝子)が見出された。これらの遺伝子と相同性の高い遺伝子がゼブラフィッシュに存在することを確認したため、現在各遺伝子のノックアウトフィッシュおよびヒト遺伝子変異を模倣したノックインゼブラフィッシュの開発を進めている。また、mRNA decayに関与し先天性心奇形と中枢神経系の奇形を発症する遺伝子SMG9についてもゼブラフィッシュモデルを作製し、非常に興味深い表現型を示している。今後さらに解析を進める。現在、ノックアウトゼブラフィッシュに関しては問題なく作製することができているが、ヒト疾患で認めた点変異等の遺伝子変異を模倣するノックインモデル作製はまだ安定的に作製できていない。これを克服し簡便にヒト疾患を模倣するゼブラフィッシュを作製するため、ゲノム編集による胚操作を行う際にDNA修復を調節する化学物質を添加したり、物理的環境に変化を与えて遺伝子変異を導入するための合成DNAの相同組換え効率を高めるなどの方法を試している。今後、これらの実験から高効率のノックインゼブラフィッシュモデル作製のための方法を確立したい。
|
Research Products
(11 results)