2020 Fiscal Year Annual Research Report
マウス卵母細胞再構成系を利用した感染や炎症による胚リプログラミングへの影響研究
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20H03654
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Research Institution | Osama Woman's and Children's Hospital |
Principal Investigator |
柳原 格 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 免疫部門, 部長 (60314415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西海 史子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 免疫部門, 流動研究員 (60599596)
呉 恒寧 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 免疫部門, 研究技術員 (80648139)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウレアプラズマ / 始原生殖細胞様細胞 / 初期胚発生 / 核酸増幅 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国で2017年、生殖補助療法を受けて生まれた児は16人に1人である。ウレアプラズマの男性不妊への影響についてはいまだに議論されている。今年度、マウス受精卵に対するウレアプラズマ感染の影響を調べた。マウス精子に日本人由来のウレアプラズマを感染させ体外受精を行った。感染マウス精子は菌量依存的に運動性を失い、共焦点レーザー顕微鏡観察では精子内に菌が侵入していた。走査型電顕像では、感染マウス精子は凝集し、菌は主に頭部、ミッドピースに付着していた。感染精子は活性酸素種を産生し、アポトーシスを起こした。感染マウス精子を用いた体外受精では、受精率は低下し(感染58%対 非感染85%)、胚のグレーディング( 48時間後)で胚移植に適さないグレードC+Dの割合が増加し(感染57%対 非感染17%)、胚盤胞への胚発生率(96時間後)は低下していた(感染19%対 非感染60%)。受精卵内にもウレアプラズマは侵入していた。少なくともマウスにおいて本菌は男性不妊の原因となり、初期の胚発生に影響した。 在胎週数32週未満の早産児の鼻咽頭スワブ、並びに気管吸引液におけるウレアプラズマの培養、ならびに核酸増幅法を比較検討した。鼻咽頭スワブでの培養検査結果に対する感度はLAMP法とリアルタイムPCR法で61.5%(8/13)と69.2%(9/13)、特異度は両者とも93.0%(53/57)であった。気管吸引液では培養法に比べ、LAMP法とリアルタイムP C R法で感度と特異度は共に90.9%(10/11)と91.4%(32/35)であった。核酸増幅法による早産児のウレアプラズマの検出には、気管吸引液の感度が高く適していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、マウス受精卵あるいは、卵母細胞におけるウレアプラズマの影響を調べることである。今年度は、その前段階として、研究概要に示した様に感染マウス精子への影響と、受精率、及び初期胚発生への影響を観察した。ウレアプラズマはマイコプラズマ科の細菌であり最小生物の一つで、一般的な光学顕微鏡での観察は難しい。ウレアプラズマの遺伝子工学的な技術はいまだに困難であり、遺伝子の挿入や、欠失を安定して作成する事ができない。その理由の一つとして、我々はこれまでの日本人由来ウレアプラズマのゲノム解析からいくつかの新たな制限修飾系を見出しており、発見した制限酵素などによるヌクレアーゼ活性が影響すると考えられた。今回はウレアプラズマの外膜を蛍光色素でラベルし、超高感度顕微鏡カメラで観測する手法を用い、感染精子と共に受精卵内にウレアプラズマが侵入する事を見出した。また、ウレアプラズマはHeLa細胞などの培養細胞に侵入した際には、宿主の細胞膜系を破壊し、オートファジー経路を一部逸脱し、細胞内で生存する事を以前報告した。この宿主膜系を破壊する因子を同定するため、酵母の液胞輸送系の障害因子スクリーニング法を用いて、解読したゲノム配列を元に機能未知遺伝子のスクリーニングを行った。これまで2つの膜障害候補遺伝子を得た。その中の1遺伝子に着目し、機能解析を試みた。その結果、この遺伝子は宿主細胞に空胞を形成させる新たな病原因子である事がわかった。一方、ウレアプラズマは栄養源である宿主細胞のアポトーシスを回避させる機構も備えていることが判明し、宿主細胞とうまく折り合いをつけながら、時に細胞にダメージを与え、時に宿主細胞死を回避しつつ生存している事が明らかになってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス精子への感染実験などの宿主細胞への実験で明らかになった様に、ウレアプラズマは菌量依存的に宿主細胞を障害する。そこで、これらの細胞にウレアプラズマを種々の濃度で細胞に感染実験を行う必要がある。マウスから卵母細胞を大量に採取する事は現実的ではない。そこで、マウスE S細胞から分化させ、セルソーターを用いて1回の操作で始原生殖様細胞を5~10万個ほど作成する系を構築したので、この系を用いて始原生殖細胞様細胞への影響をエピジェネティックな解析を中心に進める。マウスの生殖細胞におけるメチル化領域を複数個所選定し、これらの領域について次世代シーケンサーを用いたメチル化解析を行う。次世代シーケンサーは現有の機器を利用し、解析はCLCを用いる。 ウレアプラズマの核酸を高感度に増幅する為の核酸増幅法をさらに改良する。すでに耐熱性逆転写酵素、独自のDNAポリメラーゼを組み合わせて、溶液中5分子の合成RNAを検出する系を作成した。今後は、デジタルPCR機器も組み合わせながら、ウレアプラズマのRNA検出を高感度に検出する方法を改良する。このことによって、ウレアプラズマが生殖細胞あるいは授精卵内でどのような病原因子を発現し、宿主と相互作用しているのかを詳細に解析していく。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] The ability of Ureaplasma parvum to invade mouse sperm, fertilize eggs through infected sperm, impair mouse sperm function, and embryo development2020
Author(s)
Ito K, Akai K, Nishiumi F, Nakura Y, Wu HN, Kurata T, Onodera A, Kawai Y, Kajiyama S, Yanagihara I
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Journal Title
F&S Science
Volume: 2(1)
Pages: 13-23
DOI
Peer Reviewed
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