2020 Fiscal Year Annual Research Report
アトピー性皮膚炎における2型自然リンパ球の活性化調節機構の解明
Project/Area Number |
20H03705
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小林 哲郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (60624236)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 皮膚 / 自然リンパ球 / ILC2 / アトピー性皮膚炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビタミンD3誘導体であるMC903をマウス皮膚に塗布すると皮膚ILC2の活性化および増殖が起こり、アトピー性皮膚炎様の炎症性変化が起きることが知られている。このアトピー様炎症は獲得免疫系のT細胞を欠損したRag2-/-マウスにおいても起こることからTリンパ球非依存的な自然免疫システムを介した皮膚炎の機序を調べるのに適したモデルであると考える。このRag2-/-マウスにおける皮膚炎が野生型の皮膚炎よりも増強する傾向にある知見からILC2を抑制する細胞として獲得免疫系のT細胞、特に制御性T細胞(Treg)の関与を考えた。 1.Tregをコンディショナルに欠損させることができるFoxp3-DTRマウスを入手し、MC903皮膚炎を解析したところ、Treg欠損皮膚では炎症が野生型マウスよりも増悪し、ILC2を始めとした炎症性細胞の数が増していた。またFoxp3-DTRマウスの骨髄をRag2-/-Il2rg-/-移植した系においてもTreg欠損時に皮膚炎が悪化した。ただ一般的にTregを欠損した臓器ではあらゆる炎症が増強する傾向にあるためこれが一概にILC2制御によるとは言い難い。TregとILC2の関係性については他の角度から研究を進める必要がある。 2.MC903皮膚炎の際に活性化が誘導される細胞群を網羅的に解析するため、10XプラットフォームのシングルセルRNAseq解析を行った。その結果、免疫細胞のみならずケラチノサイトや線維芽細胞にも遺伝子変化が集中して起きており、その中には免疫細胞を活性化するサイトカインなどの遺伝子も含まれていた。またILCのクラスターに特に注目するとこれまでに報告のないNK/ILC1様のクラスターがMC903皮膚炎時に大きな変化を示しており、皮膚炎の形成に関与している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.Tregの関与についてはFoxp3-DTRマウスを用いることで検討することができた一方で、ILC2とTregの直接の関係性に迫るツールが必要であるという課題が浮かび上がった。また皮膚ILC2の定義が未だにあいまいなことも課題の一つと考える。皮膚ILC2は肺の典型的なILC2のようにST2陽性の細胞として検出されず、ICOSやCCR6陽性細胞として区別される。ただこの集団には申請者が報告したILC3様の細胞も含まれており、これらをILC2として定義してよいのかという問題が残る。 2.シングルセルRNAseqの解析によりMC903皮膚炎に関わる細胞集団の全体像を描くことができた。一方でシングルセルRNAseqから得られる遺伝子数には限度があり、2型のアレルギー性炎症に特徴的な遺伝子発現変化を捉えていない可能性もある。一方でこれまでにほとんど報告のないNK/ILC1様細胞集団を検出できたことで新しい研究の方向性を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.Treg以外に抑制に関わる因子としてIFNgの関与を疑っている。申請者の研究室ではIFNg欠損マウス、IFNg受容体欠損マウスをそれぞれ保有しており、これらのマウスでMC903皮膚炎がどのような変化を起こすか解析することで皮膚ILC2抑制機構解明の方向性を見出したい。さらに予備データからIL18R欠損マウスではMC903皮膚炎が通常の炎症とは異なる変化を示した。特に炎症の治癒が長引く傾向にあった。この原因がどこにあるのかはっきりしないが、皮膚ILCがIL18Rを発現することを考えると、IL18Rシグナルが皮膚ILC2の制御に関与している可能性があり、この変化の詳細を今後解析していく。 2. シングルセルRNAseqから明らかになったNK/ILC1様クラスターはこれまでほとんど報告がなく、その機能も未知である。定常状態からこれらの細胞は皮膚に検出されるため、皮膚恒常性に寄与している可能性もある。今後はこれらのNK/ILC1様細胞にも注目し解析を行っていく。
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Research Products
(1 results)