2021 Fiscal Year Annual Research Report
アトピー性皮膚炎における2型自然リンパ球の活性化調節機構の解明
Project/Area Number |
20H03705
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小林 哲郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 副チームリーダー (60624236)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 皮膚 / 自然リンパ球 / ILC2 / アトピー性皮膚炎 / ILC1 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に行った実験より、特にこれまで皮膚においてはその存在がほとんど知られていなかったNK/ILC1様細胞を中心に、細胞学的特徴、機能に関して解析を行った。 1.皮膚NK/ILC1様細胞はPan-T cellマーカーとして知られ接着因子として働くCD2を発現していた。一方で一般的なNK細胞マーカーであるNk1.1やCD49bは発現していなかった。転写因子T-betとEOMESの発現を比較すると、皮膚NK/ILC1様細胞はT-betは発現しているが、脾臓や肺のNK細胞と比較してEOMESの発現は低く、ILC1に近い細胞であることが示唆された。またGranzyme AおよびBの発現が低いことからも細胞傷害活性は低いと考えられた。 2.ILC2およびILC3は分化にIL-7を必要としIL-7受容体を欠損したIl7ra-/-マウスではILC2およびILC3は存在しない。一方でこのマウスでは皮膚ILC1は存在することがわかり、皮膚ILC1の分化にはIL-7は必須ではなく、ILC2やILC3とは別の経路で分化することが示唆された。NKやILC1の分化にはIL-15が関わることが報告されている。Il15-/-Rag2-/-マウスを解析すると、Rag2-/-で増加した皮膚ILC1は著しく減少しており、ILC1の増殖にはIL-15が必要であることがわかった。 3.表皮の肥厚はアトピー性皮膚炎などの皮膚炎に共通して見られる組織学的変化である。そこで表皮肥厚にILCが関与するかについて検討を行った。表皮の肥厚を起こすモデルとして皮膚最外層をターゲットとするためテープストリッピング法を採用した。興味深いことにT細胞を欠損したRag2-/-マウスでは表皮肥厚が起こるが、自然リンパ球をともに欠損したRag2-/-Il2rg-/-では表皮肥厚が著しく減少することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ILC2の活性化制御機構に関しては既報の通りIFNgが関与しているというデータを得られた。しかしながらこれはすでに他の臓器では知られていることでありこのまま研究を進める価値は低いと判断した。そこで改めて別の視点からILC全体を理解する方向性にシフトチェンジした。その結果これまでその存在や機能がほとんど報告されていない皮膚ILC1の細胞集団に着目しその機能に解明に着手できた。この研究の方向性は新規性が高く、大きな成果を生む可能性があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.皮膚ILC1の活性化調節機構に関してより深い解析を行う必要がある。Il15-/-Rag2-/-マウスの解析からILC1の増殖にはIL-15の重要性が示唆された。現在Il15-/-も準備しておりT細胞存在下でIL-15がILC1に対してどのように働くか調べる。さらにILC1のRNAシークエンス解析を進め、ILC1活性化に関わる可能性のあるサイトカインなどの受容体を探索する。 2.皮膚ILC1の機能を明らかにするためテープストリッピング法による表皮肥厚への関与を検討する。関与していた場合は表皮肥厚反応におけるILC1の活性化因子、ILC1が産生し上皮細胞の増殖を促す因子を探索する。
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