2020 Fiscal Year Annual Research Report
エイズ完治療法に必要な細胞傷害性T細胞の同定とその誘導法の研究
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20H03726
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
滝口 雅文 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, シニア教授 (00183450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近田 貴敬 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 特任講師 (60749711)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HIV-1 / 細胞傷害性T細胞 / 完治療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
HIV-1は高変異性ウイルスでヒトゲノム内に潜伏するために、完治治療が極めて難しい。完治治療を達成するには、抗HIV薬治療中に、活性化させたHIV-1潜伏感染細胞を認識する免疫を誘導させる必要がある。そこで初年度にあたる令和2年度は、逃避変異を持ったHIV-1の増殖を強く抑制できる高感度なT細胞の同定を試みた。 HLA-B*52:01拘束性T細胞エピトープGagRI8は、HIV-1の増殖を強く抑制する“抑制エピトープ”として知られており、HLA-B*52:01陽性感染者の26%に、3つの変異(Gag280A/S/V)が見られる。そこで、RI8特異的T細胞とRI8逃避変異特異的T細胞によるHIV-1の増殖抑制についての研究を行った。その結果、Gag280A/S変異ウイルスに感染したHLA-B*52:01陽性患者では、これらの変異ウイルス特異的T細胞の誘導が見られなかったが、Gag280V変異ウイルスに感染した患者では、この変異を認識するRI8-6V変異特異的T細胞の誘導が見られた。RI8-6V変異特異的T細胞は、Gag280V変異ウイルスの増殖を抑制し、その結果、野生型ウイルスを選択すると考えられた。これらの結果から、HLA-B*52:01陽性患者は、HLA-B*52:01陰性患者よりGag280V変異の蓄積が多く見られないことが説明できた。一方、野生型およびRI8-6V変異特異的T細胞が誘導できた人は、誘導できなかった人と比べて、高いCD4T細胞数が見られたことから、これらのT細胞の存在により体内のHIV-1の増殖は抑制されていると考えられた。Gag280V変異ウイルス感染者では、強い変異ウイルス増殖抑制能を有した変異ウイルス特異的T細胞が誘導されることから、この変異特異的T細胞はHIV-1の増殖抑制に貢献していることが明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GagRI8は、エイズ進行を遅らせるHLAアリールであるHLA-B*52:01によって提示されるエピトープであり、このGagRI8特異的T細胞は、HIV-1増殖抑制に関与している。今回、このエピトープ内のGag280に見られるGag280Vという免疫逃避変異があり、GagRI8特異的T細胞により選択されることを明らかにできた。さらに、この逃避変異を含んだRI8-6Vという変異エピトープ特異的T細胞が誘導され、この逃避変異ウイルスの増殖を抑制することを明らかにし、GagRI8特異的T細胞あるいはRI8-6V特異的T細胞を誘導できている患者では、ウイルス量が低く抑えられていることが分かった。このように当初目的の「逃避変異を持ったHIV-1の増殖を強く抑制できる高感度なT細胞の同定」を達成でき、概ね研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は概ね当初計画を達成できたので、令和3年度および令和4年度は、計画通りcART治療患者でどのようなHIV-1特異的CTL(CD8+ T細胞)が存在しているかを明らかにし、HIV-1やその変異株の増殖を抑制できるT細胞の誘導やその機能を高める研究を行う。
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Research Products
(2 results)