2021 Fiscal Year Annual Research Report
エイズ完治療法に必要な細胞傷害性T細胞の同定とその誘導法の研究
Project/Area Number |
20H03726
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
滝口 雅文 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, シニア教授 (00183450)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近田 貴敬 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 特任講師 (60749711)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | HIV-1 / 細胞傷害性T細胞 / 完治療法 / 逃避変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
HIV-1の増殖抑制能が高い15種類のprotective epitopeに特異的なT細胞の検出をcART治療患者で試みた。cART治療患者(2年間以上治療し、治療中ウイルス量の検出が見られない人)111名の内、protective epitopeに対して治療前後のいずれかでELISPOTアッセイで特異的T細胞の反応がみられた78名を明らかにした。これらの患者では、15種類のprotective epitopeの内13種類に対して、14-91%の範囲でprotective epitope特異的T細胞が検出できた。 STINGリガンド用いてHLA-B*52:01のprotective epitope特異的CD8陽性T細胞の誘導をナイーブT細胞から試みた。4つのHLA-B*52:01拘束性のエピトープの内3つがSTINGリガンド 3’3’-cGAMPによってナイーブT細胞から誘導できることが確認できた。誘導できたHLA-B*52:01拘束性T細胞は強いウイルス抑制能を持ち細胞傷害活性に関与する分子の発現量も高かった。 逃避変異を認識できるT細胞の解析では、HLA-B*35:01拘束性エピトープであるNefYF9に特異的なT細胞、NefY135Fを有した逃避変異エピトープNefFF9特異的T細胞およびそれらの両方を認識する交叉T細胞の3種類がいることを明らかにできた。これらのT細胞内の抗原認識に影響を与える分子の発現を調べたところ、交叉T細胞では抑制分子であるPD-1の発現は他のT細胞より高く、変異特異的T細胞では促進分子でもあるCD160や2B4の発現が低いことが明らかになった。これらの分子の発現のレベルにより、変異ウイルス特異的T細胞および交叉T細胞は、感染者体内でHIV-1の増殖抑制能が低下することが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度には、2年間以上治療している患者で、治療中pVLの検出が認められないcART治療患者111名をリクルートでき、この内78名が研究対象となる15種類のprotective epitopeを提示するHL保有しており、当初予定していた50名以上のcART治療患者のリクルートができた。さらにこれらの患者の解析で、15種類のprotective epitopeの内13種類に対して、14-91%の範囲でprotective epitope特異的T細胞が検出でき、当初の想定以上にHIV-1特異的T細胞がメモリーT細胞として残存していることが明らかになった。 また、STINGリガンド用いてnaive T 細胞からのHLA-B*52:01拘束性のprotective epitope特異的T細胞の誘導に成功し、誘導したT細胞が高い機能を保有していることを明らかにできた。令和4年度の研究に繋がる成果を出せた。 一方、逃避変異特異的T細胞の検出に関しては、新たにHLA-B*35:01拘束性NefYF9特異的T細胞の解析で、変異特異的T細胞以外にも交叉T細胞の存在も明らかにでき、これらの逃避変異を認識できるT細胞では、T細胞の認識を抑制する分子や認識を増強させる分子の発現の差により、機能の低下がおきている可能性が示唆された。このように、逃避変異を認識できるT細胞での新たな側面を示すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度までは当初計画を十分達成できたので、令和4年度は、計画通りcART治療患者でのprotective epitope 特異的T細胞の誘導を行い、誘導できたT細胞の機能解析を行う。
|
Research Products
(5 results)