2021 Fiscal Year Annual Research Report
高度STI耐性(STI-R)HIV発現機序の解明と新規抗STI-R-HIV剤開発
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20H03727
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
満屋 裕明 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究所長 (20136724)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HIV-1 / インテグラーゼ阻害剤 / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一世代のインテグラーゼ阻害剤(INSTI)(raltegravir, RAL)に比し、第二世代のINSTI(dolutegravir, DTG)のHIVの薬剤耐性獲得に対する高い抵抗性のメカニズムを明らかにする目的で、RALに高度耐性を示す3つのHIVクローン(インテグラーゼ(IN)にG140SとQ148H/Rを有し、DTGに感受性もしくは軽度耐性を示す)を作製し、出発株として用い試験管内でDTG耐性を誘導した。DTG耐性変異体は、INの酵素活性部位周辺に同定されたアミノ酸置換L74I、T97A、F121Vのうち、1つもしくは2つを獲得していた。構造学的解析より、L74とF121は、酵素活性に重要なD64, D116, E152のうちD64および/もしくはD116と直接相互作用し、T97はF121を介してD116と接していた。Q148もまたD116およびE152と直接相互作用していることから、HIV-1のDTGに対する耐性獲得には、酵素活性部位のアミノ酸と直接もしくは間接的に相互作用する複数個のアミノ酸置換の蓄積が必要であることが示唆された。 Q148H/Rは、HIVの第二世代INSTIに対する耐性獲得を促進したことから、L74I, T97A, F121Vの耐性獲得への影響について検討した。L74IとT97Aを単一で導入したHIVクローン(HIVL74IおよびHIVT97A)とHIVL74I/F121V(HIVF121Vは増殖性を有しないが、HIVL74I/F121Vは細胞内で増殖可能)を作製し、DTG耐性を誘導したが、いずれのHIVも培養10週までに有意なアミノ酸置換がINに確認されず、DTG耐性を獲得しなかった。以上のことから、HIVの第二世代INSTI耐性獲得においてQ148H/Rが非常に重要なアミノ酸置換であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RALに耐性を有する複製可能なHIVクローンを作製することができ、それらのウイルスを用いて試験管内でDTG耐性HIV変異体を誘導することに成功した。またそれらのHIV変異体のウイルス学的および分子シミュレーションによる構造学的解析により、HIVの第二世代INSTIに対する耐性発現に重要なアミノ酸変異を同定できた。また第一世代INSTIと比較して第二世代INSTIがHIVの薬剤耐性獲得に対して高い抵抗性を示すメカニズムの一端が明らかとなった。 また本研究で同定した新規のDTG耐性関連変異であるF121Vについて(F121はretroviruses及びretrotransposonsの間で活性部位のアミノ酸と同様に高度に保存されている)、ウイルス感染性やウイルス複製に対する影響などウイルス学的特徴を明らかにした。またF121とV121の INの酵素活性部位のアミノ酸であるD116との相互作用の違いを分子シミュレーションにより構造学的に解析し、ウイルス学的解析より得られたデータを裏付けるデータを得ることが出来た。 DTG耐性HIVのIN(活性部位を含むcatalytic core domainのみ)の結晶構造解析のために、可溶化を促進するアミノ酸置換をインテグラーゼ蛋白質内に導入し、大腸菌内で発現後、結晶化に必要となる濃度の蛋白質が得られた。更に精製及び結晶化の方法を種々に検討し、顕微鏡下で観察可能な結晶が得られた。今後、野生型インテグラーゼと比較するなど、活性部位の詳細な変化を明らかにする。 第二世代INSTIsに対するHIVの耐性獲得メカニズムに関する知見が当初の計画通り集積されて来ており、結晶構造解析データと併せることで耐性発現が起こり難い新規INSTIのデザインが可能になると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、HIVの第二世代INSTIであるDTGに対する耐性発現には、INの酵素活性に重要な3つのアミノ酸(D64, D116, E152)と直接および間接的に相互作用する複数個のアミノ酸置換(L74I/M, T97A, F121V, G140S, Q148H/Rなど)の蓄積が必要であるとの結果が得られている。しかし一方で、DTG耐性変異体のIN以外のHIV遺伝子中に出現したヌクレオチドの置換がDTG耐性を付与するとの報告があり、また本研究においてもIN以外のポリメラーゼ領域がINSTI耐性に影響している可能性を示唆するデータが得られているが、HIVのIN耐性獲得におけるIN以外の分子が関与するメカニズムについては未だ明らかではない。HIVのINSTI耐性獲得メカニズムを総合的に明らかにするための推進方策として、INSTI耐性HIV変異体について、遺伝子解析、real-time PCR等の分子生物学的手法を用いた解析および分子シミュレーション等による構造学的解析を用いて網羅的に検討することで、耐性獲得に関与するIN以外のHIV遺伝子領域を同定すると共に、HIVのINSTI耐性獲得にどのように関与しているのか、そのメカニズムを明らかにする。そこから得られるデータは、INSTIの新たなターゲット分子を明らかにするだけではなく、第二世代INSTIsの化学構造を基にした新規の阻害剤デザインを推進すると期待される。
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Research Products
(1 results)