2021 Fiscal Year Annual Research Report
HIV感染症の機能的治癒を目指したアジュバント最適型新規免疫療法の確立
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20H03728
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
山本 拓也 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 免疫老化プロジェクト, プロジェクトリーダー (60752368)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エイズ / 潜伏感染 / 免疫療法 / アジュバント / HIV / SIV / CTL / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
HIV根治実現には、cART下でも存在し続ける潜伏感染細胞を再活性化し、細胞死を誘導するとともに、強力な抗HIV免疫応答を誘導して感染細胞を排除することが必要である。我々は自然免疫賦活化剤であるSTINGリガンドに着目し、STINGリガンドをアジュバントとして、ワクチンと併用することにより効率的に潜伏感染細胞を排除できる新規免疫療法の確立を目指している。 本年度は昨年度のSTINGリガンドの安全性・有効性評価を拡大し、c-di-AMP と3‘-3’-c-GAMPの2種類のSTINGリガンドについて非感染カニクイザルを用いて安全性と有効性の評価を行なった。その結果、一過性に炎症応答が見られたものの重症なものはなく、安全性が担保された。また本年度に拡張したFACSパネルを用いたマルチカラーフローサイトメーター解析からDC, NK, T細胞で活性化マーカーの発現が確認され、STINGリガンドが免疫賦活化作用を有していることが示唆された。これらの結果を総合的に評価し、0.5 mg/kgのc-di-AMPを筋注することが最適であるということが示唆された。 SIV Env特異的広範囲中和抗体については、先行研究より中和活性に加え、抗体のFcを介した免疫反応誘導機能が抗ウイルス活性に寄与していることが示唆されている(Asokan et. al., PNAS, 2020)。これを踏まえ、現在入手している7種類の中和抗体について、感染細胞表面のEnvへの結合能及びADCC活性誘導能についての機能評価を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
STINGリガンドの投与ルート及び投与量については検討の余地が残っていたことから、本年度も引き続きSTINGリガンドの投与量・投与ルートの検証と、安全性・有効性に関する試験を進めた。また、c-di-AMPだけではなく、活性化能の高い類似体である3’-3’-c-GAMPについても安全性・有効性評価を進めた。具体的には非感染カニクイザルに、0.1 mg/kg-1.0 mg/kgまでのc-di-AMP及び3’-3’-c-GAMPを筋注にて投与し、その後2週間にわたり、採血と投与部位の観察、炎症スコアリングを行った。その結果、安全性に関しては投与箇所に一過性の炎症は見られたものの、重症なものはなく14日後にはおさまった。また、血液中の炎症性サイトカイン、血算による血液サブセットの推移、intermediate monocyteに代表されるPBMC中の炎症性サブセットに関しても一過的な誘導と活性化が見られたが、7-14日後には定常状態へと戻った。このことから、STINGリガンドの安全性には問題はないことが示唆された。有効性に関しても0.5 mg/kg以上の投与において、血漿中でType I IFNやIFN-gammaが観察された。さらに、マルチカラーフローサイトメーターによる解析からPBMC中のDC, NK, T細胞の各サブセットにおいて活性化マーカーの上昇が見られ、STINGが免疫賦活化作用を示すことが示唆された。これらの結果を総合評価し、0.5 mg/kgの c-di-AMPを筋注にて投与する方法がワクチン効果を最大化することが示唆された。 SIV Env特異的広範囲中和抗体については、SIVmac239感染細胞表面上のEnvへの結合能、及びADCC活性誘導能についての機能評価を進めており、有望な機能を持つ抗体を選択した後にカニクイザル型への改変を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度当初の計画ではペプチドプールを抗原とするのではなく、核酸を用いる方が実用化に直結するのではないかとの考えのもと、mRNAを含んだいくつかの核酸ワクチンの可能性を追求する予定であった。その一方で、HIV Tat OyeワクチンがSHIV及びHIVのリザーバーサイズ縮減に有効であるという報告もなされている(Watkins et.al., Retrovirology, 2006, Sagadari et.al., Front. Immunol. 2019)。これを踏まえ、本年度から検討を進めている核酸ワクチンに加え、Tatのペプチドプールを抗原としたワクチンも候補として視野に入れる。その上で、核酸ワクチン及びTatワクチンのいずれか、ないしはその両方をワクチンとして選択する。さらに、アジュバントとしては本年度検討を行なったc-di-AMPを用いる。これらワクチンとアジュバントを非感染カニクイザルに投与し、抗原特異的免疫反応誘導能を評価する。 SIV Env特異的広範囲中和抗体については、in vitroにてSIVmac239発現細胞表面上のEnvへの結合能及びADCC活性誘導能を検討し、抗体のFcを解した免疫反応誘導機能を評価する。その後、有望だと思われる抗体について、Fc領域をカニクイザル型の各IgGアイソタイプへ改変する。その後、カニクイザル型のSIV Env特異的広範囲中和抗体の精製を行い、SIV感染カニクイザル由来のリンパ節または脾臓細胞を用いて感染細胞除去効率について検証を進めていく予定である。
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Research Products
(8 results)