2021 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト口腔内間葉ミューズ細胞から分化誘導した心臓原基を用いた新規再生医療法の開発
Project/Area Number |
20H03761
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 保之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60344595)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 美穂 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (20845317)
石川 博 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (30089784)
丸島 愛樹 筑波大学, 医学医療系, 講師 (40722525)
松丸 祐司 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70323300)
松村 明 筑波大学, 医学医療系, 客員教授 (90241819)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 歯髄幹細胞 / 胚様体 / 胚子様構造体 / 心(臓)原基 / 心筋細胞 / 刺激伝導系細胞 / 心臓弁膜 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト歯髄初代培養細胞から薄撒き法で歯髄幹細胞を得た。幹細胞であることを免染(Nanog, Oct3/4、Sox2抗体使用)、RT-PCR(Nanog, Oct3/4、Sox2のプライマー使用)で評価した。歯髄幹細胞を天蓋培養し胚様体を作製した。次に、胚様体をローズのチャンバー内に入れ、EmbGF添加培養液で約30日間還流培養して胚子様構造体を作製した。体腔を有している胚子様構造体の多くに心拍動が認められた。心拍動を有する胚子様構造体の方が発育が良い傾向があった。一方、還流培養液の流速不足等の理由で、ローズのチャンバーの壁に付着した胚様体は平板状に発育し、平板中に3胚葉を認めることが多かった。また大きくなったものには、その長軸正中部に脊索様の構造が観察されることが多かったが、各種の器官・臓器の発育はほとんど認められなかった。心拍動する原基を実体顕微鏡下に採取したところ1心房1心室で、その間に非常に大きな弁状の構造物が確認された。また心房には血管様管腔が付着していた。心原基から実体顕微鏡下に血管様構造物と心弁膜を外し、心室を培養液中で採取した。アクターゼを用いて心室壁の細胞を解離した。遠心してアクターゼを取り除き、初代培養を行った。初代培養中には上皮様細胞、心筋細胞、神経様細胞が観察された。神経様細胞は刺激伝導系細胞と思われたので、PDMSの板に200μmの溝を掘り、溝から細胞が遊走しないように足場としてアテロコラーゲンビーズを使用した。まず、ビーズと神経様細胞を混和して回転培養して細胞ビーズを作製し、これを溝の中に入れて培養し、神経束様の索状物を作製した。次に自動収縮する心筋細胞の培養を行った。細胞の分裂速度は極めて遅いため、分裂を促進する物質を試したところ、アルギニンが分裂を促進させることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.流速の検討:胚様体胚子様構造体の成育に伴い重量が増すため還流培養液の流速を変化させ、胚子様構造体の大きさ(重さ)に比例した最適な流速を検討した。その結果、胚様体時は、1ml/分、構造物が2mmで2ml/分、5mm以上で3ml/分であった。2.心筋細胞分裂を促進させる物質の検討:心筋細胞を培養した培養液(CM)中の各アミノ酸量を定量した結果、アルギニンと次いでシステインの消費が最も多かった。3.体腔を有する胚子様構造体の作製方法:胚様体がRoseのチャンバー内壁に接着すると胚子様構造体は平板状に発育することが判明した。接着を防ぐためにチャンバーの内面をシリコンコーティングした。しかし長時間内壁に接着していると再浮遊しなくなり、平板状に発育してしまった。そのためチャンバーの底部から培養液が流入し、上部から流出するようにガスケットへのチューブの刺し方を変えた。また胚子様構造体の重量増加に伴い流速を早くした。4.心原基が1心房1心室であるため、中隔壁形成が認められなかった。神経様細胞(刺激伝導系細胞)を多数得ることは出来なかった。還流培養期間を45日まで延長したが、2心房2心室は認められなかった。5.心筋細胞の移植法を検討:心筋細胞を移植するモデル動物の作製法を検討しているが、まだ最適な梗塞法が確立していない。そのため、梗塞を起こしていない心筋壁に心筋細胞を移植している。ヒトの心筋細胞はscidマウスの心筋壁内に活着していることが判明した。6.心筋細胞を解離する消化酵素の検討:トリプシン-EDTAは増殖する心筋細胞をsubcultureするのには問題ないが、心原基構成細胞を解離するには細胞のviabilityを低下させるため適していないことが判明した。今のところアクターゼが適していると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.EmbGFの検討:胚様体から心原基を有する胚子様構造体を発育・作製するために適したEmbGFを作製する必要がある。そのため、胚様体から胚子様構造体に至る過程のconditioned medium(CM)を解析し、どのようなアミノ酸が消費されているかを明らかにし、その結果から最適な培養液を作製したいと考えている。また、初期胎盤が産生する生理活性物質を培養液に添加して培養する予定である。2.胚様体を効率よく作製のために卵管上皮細胞を培養したCMの検討:受精卵が卵割を繰り返しながら卵管内を移動し胚盤胞期に子宮壁に着床する。この結果を鑑み、胚様体を天蓋培養で作製する際、卵管上皮細胞を培養したCMを培養液に添加してみようと考えている。3.心筋細胞は互いに接着しやすく、接着すると細胞分裂が抑制されるため、細胞接着を抑制する方法を検討している。4.上皮様細胞の同定:心原基から採取する上皮細胞は心内膜由来と考えられる。この細胞の使い道を検討したい。5.神経束様索状物の電気生理学的評価:電気生理の専門家と共同研究する予定である。6.弁の使用方法の検討:バイオ人工弁を作製するデバイスの作製を検討している。7.ペースメーカー細胞の同定:胚子様構造体の心原基は80回/分で拍動している。拍動するためにはペースメーカーの細胞が存在しているはずとして、位相差顕微鏡下にこの細胞を探した結果、細胞が収縮すると心筋全体が収縮現象を見つけたので、この細胞を位相差顕微鏡下に採取する。8.今までに得られたノウハウを使って、HLA-Aホモドナーの歯肉間葉幹細胞から胚様体を作製し、これを胚子様構造体に発育させ、心原基を得る。この心原基を使用して他家移植への道を拓く。これに成功したら、次にHLA-Bホモドナーの歯肉間葉幹細胞で心原基を作製する予定である。両者に成功すれば、日本人の約75%の人に他家移植できるはずである。
|