2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the mechanism of aortic aneurysm development based on mechanotransduction and prediction of aortic aneurysm rupture
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20H03762
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柳沢 裕美 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 教授 (40746301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平松 祐司 筑波大学, 医学医療系, 教授 (30302417)
安藤 正浩 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 次席研究員(研究院講師) (50620803)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大動脈瘤 / メカニカルストレス / 細胞外マトリクス / トロンボスポンディン1 / 大動脈瘤破裂 / ラマン分光法 / ラベルフリーイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
大動脈瘤は慢性的不可逆的に拡大するが自覚症状に乏しい。また破裂時の死亡率が高いため、瘤の発生や成長を早期に阻止し、瘤破裂を未然に防ぐことができれば、大きな福音となる。そのためには、①瘤発生と成長のメカニズムの解明と②瘤破裂の予測技術の開発が必要である。本研究では、大動脈瘤形成に関与する分子メカニズムを明らかにすること、ラマン分光法を用いたラベルフリーイメージングにより血管壁破綻(破裂)の予測技術基盤の創出を行うことを目的とする。 ①に関して、初年度は、我々が確立した生後発症の胸部大動脈瘤マウスモデル(Fbln4SMKO)を用いて、前年度に同定した大動脈瘤増悪因子であるトロンボスポンディン1(TSP1)に着目し、平滑筋細胞(SMCs)におけるTSP1上流制御因子の同定とシグナル伝達経路の解析を行なった。さらに、メカニカルストレス応答因子であるTSP1がどのように単軸方向のストレッチに対して局在を変え応答するかを、平滑筋細胞培養系で解析した。その結果、TSP1はストレッチに応答し、転写調節因子であるYAPの核内移行を制御することが判明した。 TSP1のYAPを介した作用は、生体内での圧負荷や血管結紮による新内膜形成のモデルで解析した。 ②に関して、野生型、Fbln5マウスモデル(大動脈の弾性線維が障害されているが大動脈瘤は発症しない)、Fbln4SMKOマウスモデル(弾性線維が障害されかつ大動脈瘤を発症する)の3タイプを用いて、レファレンスタンパク質から獲得した7種類のラマンスペクトル(弾性線維、膠原線維、脂肪、核、アグリカン、バーシカン、その他の成分)を用いてラマンイメージングを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画1)メカニカルストレス応答転写因子Egr1が、TSP1のメカニカルストレス応答性発現増加に必須であることを平滑筋細胞培養系を用いて確認した。さらにEgr1の上流因子をIPA とRT-PCRを用いて検索した結果、トロンビン受容体であるprotease activated receptor1 (PAR1)が候補因子として同定された。そこで、Fbln4SMKO大動脈瘤やヒト胸部大動脈瘤にてPAR1やトロンビンの発現を調べた結果、大動脈瘤で発現が増加していることを確認した。さらに、Fbln4SMKOからEgr1を欠損させたり、トロンビン阻害薬や第Xa因子阻害薬の投与で大動脈瘤の発症が部分的に抑えられることを示した。 計画2)平滑筋細胞のメカニカルストレス応答機能が正常に保持されている場合、TSP1は伸展刺激に応答して分泌され、平滑筋細胞のavb1インテグリン受容体に結合し、YAP転写調節因子の核内移行を促進することがわかった。またYAPの核内移行はアクチン線維には影響しないが、focal adhesion kinaseを阻害すると抑制されることなどを明らかにした。 計画3)平滑筋細胞のストレッチによって、弾性線維構成マトリクスであるfibrillin-1やfibulin-5などが分泌されることがわかった。 計画4)野生型、大動脈の弾性線維が障害されているが大動脈瘤は発症しないマウスモデル(Fbln5KO)、弾性線維が障害されかつ大動脈瘤を発症するマウスモデル(Fbln4SMKO)の3タイプを用いて、大動脈のラベルフリーラマン分光イメージングを、サンプル数を増やして行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
メカニカルストレスの感知と応答(メカノトランスダクション)がどのように大血管疾患に関わっているかを、大動脈瘤モデルを中心にして研究を進めてきたが、今後は、大動脈瘤以外の血管疾患にも応用していく予定である。すなわち、大動脈の圧負荷はどの細胞によって主に感知され、そのような応答が生じるか、その主役となる細胞種は均一であるか、あるいはサブタイプによってメカニカルストレスの応答が変わってくるか、血管細胞の他に、血管に常在する免疫細胞や神経細胞などはどのように応答するか、などを検証していく予定である。
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Research Products
(16 results)