2021 Fiscal Year Annual Research Report
ブタ体内でヒト心筋組織を作製する手法の開発とその応用
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20H03768
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
遠山 周吾 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90528192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 功一 佐賀大学, 医学部, 教授 (50420609)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヒトiPS細胞 / ブタ / バイオ3Dプリンタ / 組織工学 / 心筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトiPS細胞はあらゆる細胞に分化可能であり、再生医療や創薬スクリーニングへの応用が期待されている。しかしながら、ヒトiPS細胞由来心筋細胞は胎児型の特徴を有しており、その結果として再生医療においては催不整脈作用に直結し、創薬研究においては表現型のばらつきに繋がる。一方、細胞の成熟化を促進する方法に関しては、培養環境や組織構築、物理刺激など様々報告されているが、いずれも成人のヒト心筋組織とは程遠い。そこで本研究では、ブタをin vivoリアクターとして利用することによりヒトiPS細胞由来心筋組織における成熟化を促進させ、ヒト成熟化心筋組織を作製し、再生医療や創薬研究を加速させることを目的としている。 2021年度は、ヒトiPS細胞由来の心筋細胞を純化精製する手法(Tohyama, Cell Metab 2016)や分化細胞に残存中に未分化幹細胞を除去する手法(Tanosaki, Tohyama*, iScience 2020)、ヒトiPS細胞を効率よく増殖させる手法(Someya, Tohyama*, iScience 2021)に関するプロトコールを作成し、論文発表した(Kameda, Someya, Tohyama*, STAR Protocols 2022a, Tanosaki, Akiyama, Tohyama*, STAR Protocols 2022b)。また、佐賀大において作製したヒトiPS細胞由来心室筋チューブ組織を免疫不全マウスやラットへ移植し、1か月後に移植した心筋チューブ組織が生存していることを確認し、成果を論文発表した(Kawai, Tohyama*, Front Cardiovasc Med 2021)。さらに、ヒトiPS細胞由来心筋組織の成熟化に関する総説を発表した(Tani, Tohyama*, Front Cell Dev Biol 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、ヒトiPS細胞由来の心筋細胞を純化精製する手法(Tohyama, Cell Metab 2016)や分化細胞に残存中に未分化幹細胞を除去する手法(Tanosaki, Tohyama*, iScience 2020)、ヒトiPS細胞を効率よく増殖させる手法(Someya, Tohyama*, iScience 2021)に関するプロトコールを作成し、論文発表した(Kameda, Someya, Tohyama*, STAR Protocols 2022a, Tanosaki, Akiyama, Tohyama*, STAR Protocols 2022b)。また、佐賀大において作製したヒトiPS細胞由来心室筋チューブ組織を免疫不全マウスやラットへ移植し、1か月後に移植した心筋チューブ組織が生存していることを確認し、成果を論文発表した(Kawai, Tohyama*, Front Cardiovasc Med 2021)。さらに、ヒトiPS細胞由来心筋組織の成熟化に関する総説を発表した(Tani, Tohyama*, Front Cell Dev Biol 2022)。 以上よりおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針としては、我々が独自に開発した免疫不全ブタへヒト心筋チューブ組織を移植することを考えている。 研究協力者の小林らは既に胸腺脾臓摘出免疫不全ブタの作出に成功しており、研究分担者である佐賀大の中山らとの共同研究により、バイオ3Dプリンタにより作製した線維芽細胞チューブ構造体を頸動脈に吻合し、長期の開存を確認している (Nat Com 2019)。そこで、今後は、既に作製に成功しているヒトiPS細胞由来心筋チューブ組織を頸動脈に吻合し、ブタ体内で心筋チューブ組織が成熟化するか否かを評価する。頸動脈に吻合することにより、血流が入るだけでなく、生理的な動脈圧負荷をかけることができる。移植後、経時的に移植組織の評価を行うことを考えている。
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