2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H03769
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 里奈 京都大学, 医学研究科, 助教 (80847517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊達 洋至 京都大学, 医学研究科, 教授 (60252962)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 抗炎症性脂質メディエーター / 虚血再灌流肺障害 / 肺移植 / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年同定された抗炎症性脂質メディエーター(Specialized pro-resolving lipid mediators: SPMs)は急性炎症の収束に大きく関わり、過度な炎症による臓器障害を軽減すると報告されている。肺移植や虚血再灌流肺障害(Ischemia-reperfusion injury: IRI)においてSPMsの動態と作用の検討を行うことは、虚血再灌流肺障害やそれをきっかけとする拒絶反応の治療法の開発につながり、肺移植患者の予後の改善に貢献しうる。申請者らは、2019年度・科研費・研究活動スタート支援により、ラットの左肺門を一定時間遮断し温虚血状態とした後に、遮断を解除して再灌流を行い、IRIを生じさせるラット左肺門クランプモデルにおいて、障害肺においてSPMの受容体の1つであるFPR2が障害肺における炎症細胞に発現しており、FPR2に作用するSPMであるAspirin-triggered (AT) resolvin D1(AT-RvD1)とAT-lipoxin A4(AT-LXA4)を投与すると、IRIに対して保護効果があることを確認した。本研究期間では、AT-RvD1とAT-LXA4の投与前にFPR2受容体拮抗薬を投与すると、AT-RvD1とAT-LXA4のIRIに対する保護効果はみられず、AT-RvD1とAT-LXA4の効果はFPR2を介するものであることを確認した。さらに、ラット左肺門クランプモデルにおいて、IRI発症後いくつかの再灌流時間における障害肺の生理データと左肺組織を採取し、質量分析(lipid metabolomics)にて内因性のSPMsの測定を行い、障害肺の肺機能や炎症性サイトカインとの関連を検討中である。また、SPMsの作用を肺移植モデルで詳細に検討するため、マウス肺移植モデルの確立と実験条件の最適化を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炎症細胞に発現するFPR2への介入がIRIの治療ターゲットになりうることを確認、また、これまで報告のないIRIの発症と改善のプロセスにおける内因性のSPMsの測定が施行しえ、おおむね順調に経過している。
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Strategy for Future Research Activity |
SPMsであるAT-RvD1とAT-LXA4は、FPR2受容体を介してIRIに対する保護効果を発揮することが明らかとなった。さらに、FPR2がIRIに対する治療ターゲットになりうるかを確認するためには、FPR2がIRIの発症と収束過程に果たす役割の詳細な検証が必要である。これらの知見の肺移植への臨床応用可能性の検討として、肺移植モデルにおけるSPMsとその受容体の動態と作用の検証を行う必要がある。マウスのIRIモデルと肺移植モデルを確立し、また、肺移植の臨床検体を用いてこれらの検討をすすめる。
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