2022 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類術後ARDSモデルを用いた発症メカニズムの探求と予防への応用
Project/Area Number |
20H03778
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
後藤 行延 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20451700)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平松 祐司 筑波大学, 医学医療系, 教授 (30302417)
揚山 直英 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 主任研究員 (50399458)
松原 宗明 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30743679)
井上 貴昭 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60379196)
佐藤 幸夫 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10312844)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ARDS / 骨髄 / 白血球 / CPB |
Outline of Annual Research Achievements |
外科手術後の全身性炎症反応症候群(SIRS) からARDSに至った場合の発症後死亡率は高く難治性であるが故に、その発症予防が重要である。我々が先行研究で示したCPBによる骨髄由来白血球の肺循環へは術後発症メカニズム解明における重要な端緒と考える。 本研究では、サルCPB/肺障害モデルを用いて術前からCCL23による骨髄刺激抑制に加え、術中のトロンボモジュリン: rTM の好中球活性化抑制作用、抗炎症作用を併用、さらに術後にPMX-DHP による血中サイトカイン、および骨髄由来活性化白血球そのものの吸着を施行し、手術侵襲が惹起する循環血中、および骨髄由来白血球の肺への集積制御を目的とする。BrdUが静注によって分裂過程にある細胞のDNAに取り込まれることを利用して骨髄白血球前駆細胞を標識し、手術侵襲によって新規に誘導される骨髄由来細胞の循環血液中への放出と、肺への集積を経時的に追跡する。 前年度からのCCL23(recombinant human CCL23)群(CCL23を術前に静注し、骨髄の細胞分裂過程を制御して骨髄刺激に対する白血球前駆細胞の保護作用により、骨髄由来活性化白血球を制御する群)の実施結果を解析し、論文発表した(Heart, Lung and Circulation 32 (2023) pp. 424-433)。 さらに、PMX-DHP群遂行のため、これまで開発したCPBモデルを基盤とし、その周術期にPMX-DPHを使用する吸着モデルを開発、発展させた。今後、術後PMX-DHP施行よる、骨髄由来白血球の肺集積抑制効果を検証し、術後肺障害に対する発症メカニズムの解明、ひいては予防への応用によって外科手術成績の躍進的な向上を目指したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前回までのCCL23群の経過を論文発表し、さらに、新たな群に向けてのモデル開発に成功し、これを基にした今後の実験遂行が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターで飼育されている体重5kg前後のオスのカニクイザル20頭を、最低8週間の休息インターバルをおいて繰り返し使用し、のべ40回の体外循環実験を計画する。初年度(2020年)より開始した10回の体外循環と病態制御の手法により分けた各群の実験を継続する。 BrdUを静注(100mg/kg)しカニクイザル(Adult male; B.W. 5kg前後)の骨髄前駆細胞を標識する。24時間後(BrdU標識白血球が血中に出現し始める)体外循環実験を開始する。全身麻酔下に胸骨正中切開、30分間の完全体外循環(肺虚血モデル)を含む、計120分間の体外循環をおこなう。開始後120分後に体外循環から離脱し、止血ののち閉創する。その後は鎮静、人工呼吸器管理とし、術中、および術後一週にわたり経時的に血液検体、気管支肺胞洗浄(BAL)液、肺組織の採取、および画像撮影をおこなう。 最終年度として、当初の群分けに基づき、術後PMX-DHP施行を中心とした複合的な骨髄由来白血球の肺集積抑制効果の解析へと発展し、引き続いて炎症機転制御効果の検証を進めていきたい。
|