2020 Fiscal Year Annual Research Report
マルチオミクス統合解析を基にしたグリオーマ再発・悪性化機構解明と新規治療戦略創出
Project/Area Number |
20H03792
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
武笠 晃丈 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90463869)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永江 玄太 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (10587348)
菰原 義弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (40449921)
篠島 直樹 熊本大学, 病院, 講師 (50648269)
田中 將太 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80643725)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | グリーマ / 多様性 / 再発 / 悪性化 / マルチオミクス解析 / エピゲノム / 微小環境 / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グリオーマの腫瘍内多様性に着目し、その再発・悪性転化に関連して生じる変化を、主に分子プロファイルのマルチオミクス解析を基盤として解析することを目的としている。より具体的には、A)再発・悪性転化に伴うエピゲノム変化の網羅的解析を基にした腫瘍進展機構解明と治療標的創出、及び、B)再発・悪性転化に伴うグリオーマ微小環境の経時的変化解析による免疫逃避機構解明を行うための研究に注力した。 A)の再発・悪性転化に伴うエピゲノム変化の解析においては、再発悪性化検体でのエピゲノム変化の解析を行うにあたり、2021年に改訂される脳腫瘍のWHO分類にてCDKN2A/Bのホモ欠失が、IDH変異を有する星細胞腫の悪性度(グレード)診断に必要となったため、これまで保存した検体のIDH遺伝子変異、染色体1p/19qヘテロ接合性喪失、CDKN2A/Bの欠失を、シークエンス、MLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)法、定量的リアルタイムPCR法にて解析した。CDKN2A/Bの欠失判定において、MLPA法と定量的リアルタイムPCR法において結果に相違があったため、適切な検査条件の検討を行うことで、真の悪性転化症例を抽出した。この他、そのプロモーターの能動的DNA脱メチル化が悪性化に関連することを先に報告したIGF2BP3遺伝子について機能解析を継続的に行った。 B)のグリオーマ微小環境変化の免疫関連解析においては、微小環境に存在する腫瘍随伴マクロファージ(tumor-associated macrophage: TAM)の機能解析を行った。特に腫瘍やTAMより分泌されるサイトカインIL-1βにより、グリオーマ細胞の細胞増殖が3次元培養下にて引き起こされることを確認し、その詳細な機序解明のための解析を継続して施行した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度においては、A)の再発・悪性転化に伴うエピゲノム変化解析の遂行において、再発悪性化検体でのエピゲノム変化プロファイル解析を行うにあたり、2021年に改訂された脳腫瘍のWHO分類にてCDKN2A/Bのホモ欠失が、IDH変異を有する星細胞腫の悪性度(グレード)診断に必要となったため、真の悪性化症例を遺伝子情報から同定し、これら検体を用いたメチル化プロファイル解析を行うことを最初の目標とした。そのため、これまで保存した多数検体において、IDH変異、染色体1p/19qヘテロ接合性喪失、CDKN2A/Bの欠失解析を施行したため、これに時間を要した。この点において、進捗はやや遅れていると考える。特に、CDKN2A/Bのホモ欠失の同定を多数検体で施行するための簡便・正確な検査法が確立されていなかっため、MLPA法、定量的リアルタイムPCR法を用いてその最適化を施行した。これにより、適切な検体の選び出しを行い、順次、イルミナ社 DNAメチル化ビーズアレイInfinium EPIC BeadChipによるメチル化プロファイル解析を施行している。当初予定していた、IGF2BP3の機能解析は順調に進行している。また、能動的DNA脱メチル化に関わる機構の解析も、引き続き、それが生じる機構に関する解析研究を施行した。 B) グリオーマ微小環境変化の免疫関連解析においては、特に、熊大・細胞病理学講座と共同で、再発に関わるTAMより分泌されるIL-1βなどの因子について、腫瘍幹細胞の性質や腫瘍増殖に与える影響を in vitroを中心に研究を進め、順調に進捗した。
|
Strategy for Future Research Activity |
A)の再発・悪性転化に伴うエピゲノム変化解析の遂行における1)受動的DNA脱メチル化の解析においては、引き続き以前に悪性転化に関連するとして同定した、RNA修飾に関連することが知られるIGF2BP3の解析を、そのプロモーター脱メチル化の確認と、N6-メチルアデノシン(m6A)に対する影響を含めて進める。また、今回新たに確認したIDH遺伝子変異及びCDKN2A/Bホモ欠失を有するグレード4星細胞腫に対して、共同研究施設である東京大学先端科学技術研究センターと共同してメチル化プロファイル解析を施行する。そして、そのデータを用いたバイオインフォマティス解析と臨床検体を用いた検証を行い、その生物学的意義の解明を進める。2)能動的DNA脱メチル化に関する解析においても、これまで得られた知見を元にした、機構解明に関する研究を、 in silico 及び in vitroの実験にて遂行し、論文作成を計画する。 B) グリオーマ微小環境変化の免疫関連解析においては、1)ネオアンチゲン発現抑制機構の解明のために、新たに取得した再発・悪性転化検体におけるネオアンチゲンの存在と、その発現の状態につき、次世代シークエンサーなどを利用して解析を進める。また、2)腫瘍随伴マクロファージの腫瘍再発・悪性化機構への寄与の解明に関しては、主にマクロファージまたは腫瘍から分泌されるIL-1βによる腫瘍細胞増殖の機序につき、シグナル伝達経路などに着目して解析するとともに、これに対する治療法の開発を検討したい。
|
-
[Journal Article] Fine-Tuning Approach for Segmentation of Gliomas in Brain Magnetic Resonance Images with a Machine Learning Method to Normalize Image Differences among Facilities.2021
Author(s)
Takahashi S, Takahashi M, Kinoshita M, Miyake M, Kawaguchi R, Shinojima N, Mukasa A, Saito K, Nagane M, Otani R, Higuchi F, Tanaka S, Hata N, Tamura K, Tateishi K, Nishikawa R, Arita H, Nonaka M, Uda T, Fukai J, Okita Y, Tsuyuguchi N, Kanemura Y, Kobayashi K, Sese J, Ichimura K, Narita Y, Hamamoto R
-
Journal Title
Cancers (Basel)
Volume: 13
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
[Journal Article] Validation study of the Japanese version of MD Anderson Symptom Inventory for Brain Tumor module.2020
Author(s)
Tanaka S, Sato I, Takahashi M, Armstrong TS, Cleeland CS, Mendoza TR, Mukasa A, Takayanagi S, Narita Y, Kamibeppu K, Saito N.
-
Journal Title
Jpn J Clin Oncol.
Volume: 50
Pages: 787-793
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] Genetic analysis in patients with newly diagnosed glioblastomas treated with interferon-beta plus temozolomide in comparison with temozolomide alone.2020
Author(s)
Natsume A, 29名, Mukasa A, Matsuo T, Hirano H, Kumabe T, Shinoura N, Hashimoto N, Aoki T, Asai A, Abe T, Yoshino A, Arakawa Y, Asano K, Yoshimoto K, Shibui S, Okuno Y, Wakabayashi T; and Members of Japan Clinical Oncology Group Brain Tumor Study Group (JCOG-BTSG)
-
Journal Title
J Neurooncol.
Volume: 148
Pages: 17-27
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-