2021 Fiscal Year Annual Research Report
眼圧と房水による眼球組織応答と緑内障ー眼圧制御機構とバイオマーカーの探索
Project/Area Number |
20H03839
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相原 一 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80222462)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋光 信佳 東京大学, アイソトープ総合センター, 教授 (40294962)
本庄 恵 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60399350)
木村 麗子 (山岸麗子) 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (80704642)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 眼圧 / 緑内障 / 圧受容体 / 脂質メディエーター / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究開発の目標は、眼圧と房水を介した眼球組織応答と緑内障をテーマであり、当該年度の実績概要は1)眼内生体圧センサーと房水脂質メディエーターによる眼圧制御機構の解明において、TRPV4に着目し、ヒト線維柱帯細胞での受容体分布、In vitro圧伸展刺激、ノックダウンによる受容体機能解析を行った。細胞伸展刺激によりアラキドン酸カスケード活性化とPGE2の放出などのPG産生により組織変化を来し眼圧を下げる機序を解明した。 2)圧による時空間的変化を反映した緑内障のmiRNAと脂質バイオマーカー探索については、miRNAの解析は予算的な問題で進んでいないが、脂質バイオマーカーとしては1)で解明した伸展刺激で放出されるPG産生による眼圧下降をプロスタノイド受容体作動薬を用いてマウスで解明した。1,2)により既存の眼圧下降薬の奏功する根本的な病態とつながる知見を得た。 3)房水と眼圧による緑内障および緑内障術後病態遷移の定量的細胞骨格測定については、房水中に緑内障で増加するTGFβ2を介した細胞骨格変化をmTOR阻害薬で抑制することを証明し、またEP2受容体作動薬での細胞骨格変化も証明し、将来的な緑内障治療薬としての可能性を示唆した。 4)マイクロ流体デバイスを用いた単一眼細胞生体情報センシングと臨床検体分析については、新型コロナウィルスによる大学入構活動制限があり、デバイス開発を行う他学部との共同研究が進まなかった。 1,2,3)より房水を介した慢性あるいは急性圧応答による眼組織変化の時空間的病態解明により、国民病である緑内障の新たな診断技術と治療薬を開発し、失明予防を目指す目的のであるが、眼圧上昇による組織伸展と房水バイオマーカーの発現を見いだし、バイオマーカーによる診断と治療ターゲットに結びつく知見を得たと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.眼内生体圧センサーと房水脂質メディエーターによる眼圧制御機構の解明については、圧受容体は既存の機械受容体の中でPiezo1とTRPV4が房水主経路に分布、In vitro圧伸展刺激によりアラキドン酸カスケード活性化とPG産生により細胞骨格変化を起こすことが判明し、当該年度論文化(1)したため順調である。また本年度の計画に向けて、TRPV4欠損マウス、脂質メディエーターLPA産生酵素ATXの過剰発現マウスを作成し準備している。 2.圧による時空間的変化を反映した緑内障のmiRNAと脂質バイオマーカー探索については、miRNAは研究資金の問題もあり伸展していないが、昨年度設けた大体目標の、圧受容体の存在を確定したことと、圧受容体刺激による局所的PG産生を介した眼圧下降をプロスタノイド受容体作動薬及び受容体欠損マウスで証明したことにより、眼圧上昇とその機序に基づいた眼圧下降治療薬の開発の正当性を実証したのは進展である。 3.房水と眼圧による緑内障および緑内障術後病態遷移の定量的細胞骨格測定に関しては、房水中に緑内障で増加するTGFβファミリーおよびEP2受容体を介した細胞骨格変化を房水流出路の線維柱帯、シュレム管で証明し、そのシグナル解明を行った。(論文2-6)将来的な緑内障治療薬としての可能性を示唆した。 4.マイクロ流体デバイスを用いた単一眼細胞生体情報センシングと臨床検体分析は新型コロナウィルスによる大学入構活動制限があり、デバイス開発を行う他学部との共同研究が進まなかった。 以上当該年度の実績として論文6報、4計画のうち3計画は進捗がありおおむね順調と考える
|
Strategy for Future Research Activity |
1.圧センサーの機械受容体として有望と思われたTRPV4欠損マウス、また組織瘢痕化による圧上昇の脂質メディエーター酵素ATXの高発現マウスを作成し、現在飼育している。圧変化への反応性や高眼圧モデルマウスとしての検証実験を行い、眼圧変動の機序、高眼圧の機序の解明の最終段階へと研究を進める。さらに受容体応答から房水産生流出制御への機能を検討する。両マウスが眼圧上昇に関与しなかった場合は、培養細胞あるいは眼球への圧負荷による反応性から圧反応性シグナルを探索する方法に切り替える。 2. 圧による時空間的変化を反映した緑内障のmiRNAと脂質バイオマーカー探索については、患者房水から緑内障病型特異的に発現変動するmiRNAおよびTGFβ1-3とATXを網羅的に同定し、バイオマーカとしての病型診断の有用性を検証する。miRNAについては候補miRNAを絞り込み、それが分解標的とするmRNAを予想し機械応答、炎症応答、及び脂質生合成に関係するmRNAを標的とするmiRNAを優先的に検証する。miRNAの機能解析には時間を要する可能性があるが、解析が容易な脂質関連因子の探索も同時進行することで結果が得られるようにする。 3.房水と眼圧による緑内障および緑内障術後病態遷移の定量的細胞骨格測定に関しては、in vivoでの実験を進めるために血管内皮に蛍光を発現したマウスを入手した。房水流出の管腔構造と房水を蛍光色素でマーキングすることで二光子顕微鏡で房水流出路を可視化し、圧負荷や眼圧下降薬を投与することにより、房水流出路の変化を確認することにした。In vivoでの細胞単位での骨格測定は光学的に困難かも知れないが、管腔組織での検証は可能と考える。 4.マイクロ臨床検体分析については工学部との共同研究がコロナ下で滞っているが、本最終年度1-3に注力することで目的を達成したいと考える。
|
Research Products
(14 results)