2022 Fiscal Year Annual Research Report
破骨細胞前駆細胞から始まる全く新しい破骨細胞誘導機構と癌による骨吸収
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20H03857
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
池田 通 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00211029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 啓 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (00302886)
栢森 高 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (10569841)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / 破骨細胞 / 骨破壊 / IL-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
私達は、広く用いられている口腔扁平上皮癌細胞株のほとんどが、破骨細胞前駆細胞(短時間のRANKL刺激により破骨細胞に分化することが運命づけられたマクロファージであるが、そのままでは破骨細胞に分化できない細胞)から強力に破骨細胞を誘導することを世界で初めて発見し、かつ、その破骨細胞誘導には破骨細胞誘導のマスター転写因子であるNFATc1の発現上昇を伴わないことも発見した。さらに、この破骨細胞にはRANKL阻害薬は無効であるが、精神神経作用がないカンナビノイドの一種であるカンナビジオールが効果的に阻害することも発見した。これら一連の発見は、これまでの破骨細胞誘導に対する見解を変え、単なるマクロファージでなく、破骨細胞前駆細胞が新たな破骨細胞誘導の重要な標的であることを示した画期的なものである。 残念ながらまだその原因分子が不明であり、本研究ではその原因分子を明らかにすることを目指している。遺伝子発現マイクロアレイに加え、蛋白発現アレイの結果を受け、候補蛋白の効果を確認することを継続したところ、以前より破骨細胞誘導を刺激する因子として広く知られているIL-1が私達が発見した口腔扁平上皮癌による破骨細胞誘導およびRANKLによる通常の破骨細胞誘導の双方をおそらく異なった機構で効果的に刺激することを見出した。 IL-1は口腔扁平上皮癌が強く発現する炎症性サイトカインであることから、口腔扁平上皮癌の浸潤により癌細胞が骨組織の近傍に至ると、口腔扁平上皮癌により誘導された破骨細胞のみならず、口腔扁平上皮癌から多少離れた所で起こる従来の機構で誘導される破骨細胞も共に数を増し活性化されることで骨破壊が劇的に亢進するという、これまで全く考えられていなかった、口腔扁平上皮癌による骨破壊機構に対する非常に有力な仮説を立てることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究成果は、IL-1という口腔扁平上皮癌が広く一般的に強力に発現している炎症性サイトカインが、私達が発見した口腔扁平上皮癌による破骨細胞誘導とRANKLによる通常の破骨細胞誘導の双方をおそらくそれぞれ独自の機構で促進することを示し、口腔癌の浸潤による顎骨破壊の総合的な生物学的メカニズムを明らかにできた可能性が高い。 私達は共存培養または口腔扁平上皮癌細胞の培養上清を用いて破骨細胞誘導を確認しているが、誘導作用はこれまで多く他の研究で示されてきた促進効果とは比較にならない程強力で明確なものであること、かつ、広く口腔扁平上皮癌細胞の性質として一般化できることから、その重要性と意義は全く異なる。今回の研究成果は口腔癌による顎骨破壊機構の病理学的なメカニズムの極めて重要な一面をとらえたと思われる。従って、口腔扁平上皮癌細胞による破骨細胞誘導の原因分子がまだ明らかにできていないものの、総合的には順調に成果を挙げていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、遺伝子発現マイクロアレイよりも格段に精度が高いRNAシーケンスも実施した。その結果、これまで候補に挙がってこなかった極めて有力な候補蛋白を6種類絞り込むことができた。今後はこれらの候補蛋白の機能を解析し、最終的に私達が発見した口腔扁平上皮癌による破骨細胞誘導の原因分子を明らかにしたい。さらに、これらの知見に基づき、阻害作用を有する薬物もしくは原因分子に対する抗体を用いた、口腔癌による顎骨破壊に対する全く新たな治療薬の開発に結びつけたい。
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Research Products
(2 results)