2021 Fiscal Year Annual Research Report
Uncovering transmission of tuberculosis based on spatial molecular epidemiology with person flow data
Project/Area Number |
20H03932
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
和田 崇之 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (70332450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 直哉 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00637449)
中谷 友樹 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (20298722)
山本 香織 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主任研究員 (70649011)
竹内 昌平 長崎県立大学, 看護栄養学部, 講師 (80432988)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 感染症分子疫学 / 結核 / ゲノミクス / 空間疫学 / 人流解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
結核の感染伝播追跡を目的とした実地疫学調査は多大な労力を伴うことから,菌株の遺伝型別による異同判定を基にして調査対象を絞り,効率を上げることが重要である.本研究で蓄積したVNTR型別データ(24領域,505株)を派生的に利用し,異同判定上問題となる「1領域違い(single locus variants, SLVs)」がどの領域に分布するのかを詳細に検討した.その結果,超多変領域(4領域)に次いで,多型性が低いとされているMIRU40が項頻度に検出されることが判明し,同領域における変異が想定外に起こりやすい可能性が示唆された. さらにVNTRデータ(2012~2016年,2,391株)を派生的に活用し,北京型亜系統群(ST11/26, STK, ST3, ST25/19, および新興型)の患者年齢を調べたところ,VNTRクラスタ(2株以上で型別が一致し,感染伝播の関係性が示唆される菌株群)に属さなかった菌株患者群において,STK, ST3の2系統で有意に高年齢層に分布し,新興型系統は低年齢層に分布した.一方,VNTRクラスタの形成は新興型で高頻度に見られたものの,クラスタ形成株の患者群では系統ごとの患者年齢層に有意な違いは認められなかった.本結果は,(1) STKおよびST3の2系統が結核罹患率の高かった時期における流行系統であり,高齢者の内因性再発が頻発している可能性と,(2) 新興型系統が感染後早期に発症しやすく,結果として高いクラスタ形成率に結びついた可能性を示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に引き続き,本研究課題にて研究対象とした大阪市域(若年患者群)由来の結核菌株,および国内特異的系統群(B2群)結核菌株について,伝播経路追跡に向けたゲノム配列データの取得を進めてきた.若年患者群データは2012年からの継続的蓄積により485株にのぼり,2022年度のうちに2021年菌株の培養,ゲノムデータの集積を終了する予定である.B2群株は,2016年登録患者までデータ蓄積が完了している状況であり,予定よりやや遅れている. 人流解析については,大阪市在住者の2010年パーソントリップ(PT)データを利用して,居住地域を定義するグリッドサイズ,接触(接近)判定,接触量に基づく重み付きネットワークの構築,コミュニティ分割(地域区分化)の手法をそれぞれ比較検証するためのシミュレーション技術を確立した.また,GPSをはじめとしたリアルタイム人流データを用いて感染拡大に重要な情報を得るために,データ点の時空間内挿,交通モードの推定,滞留の判定,接触判定などの前処理に関する検討を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに集積した結核菌株ゲノムデータを参照ゲノム配列にマッピングし,変異数が少ない株関係をゲノムクラスタ株と定義するとともに,患者情報から居住地域間の関係性を検証する.若年患者由来株については,本邦において新型コロナウイルス感染症が発生した2020年1月より以前を対象としてデータを取りまとめることとし,それ以降のデータと区分して比較することにより,コロナ禍による社会変容の影響を調べられるように調整する.2021年登録患者株は現時点でゲノムデータ集積まで到達していないため,引き続き菌株培養から行い,配列情報の取得を続ける.また,国内特異的系統群(B2群)株はゲノムデータ集積が遅れていることから,こちらも合わせて配列情報を取得する. 患者・ゲノムデータから伝播関係性を示す患者ペアデータに変換することで,地理・人流データとの相関性を調べる糸口とすることができる.まず,調査地域(大阪市)におけるリアルタイム人流データ(GPSなど)を前処理し,地域(地点)居住者間の接触量ネットワークを構築する.これをコミュニティ分割し,検出されたコミュニティ(地域区分)内外での伝播関係を説明できるかどうか確かめるため,SIRモデルに基づく病原体伝播シミュレーションによって種々の方法を比較する.同時に,上述した結核伝播患者ペアの居住地データを実データとして当てはめることにより,両者の相関性を検証する.
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