2020 Fiscal Year Annual Research Report
特定健診の有効性:Target Trialアプローチを用いた検証
Project/Area Number |
20H03941
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 正人 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80598714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠崎 智大 東京理科大学, 工学部情報工学科, 講師 (60644482)
川上 浩司 京都大学, 医学研究科, 教授 (70422318)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 特定健診 / 一次予防 / 大規模データベース / 因果推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
特定健診は生活習慣病の一時予防を目的として、2008年に開始された本邦独特の健康政策である。一方で、その有効性の検証は制度の開始前から現在に至るまでなされておらず、特定健診のこのような状況への疑問が昨今国内外から呈されている。 本研究ではこのような状況を鑑み、大規模な実データ用いて糖尿病・高血圧の新規発症に関して、特定健診の有効性を評価することを目的とする。健診を受けた人・受けなかった人を単純に比較するのみでは、例えば健康意識の違いなどが疾患(糖尿病・高血圧)の新規発生に影響することが予想されるため、適切な比較となりにくい。今回の研究では、昨今注目されている、バイアスの少ない新規研究デザイン(Target trial emulation)を用いて健診の受検者・非受検者を比較することで、健診の効果に関する精密な推定を行う。このTarget trial emulationではまず理想的な無作為比較試験(Target trial)とそのプロトコールを策定し、そのプロトコールを模倣することで、観察研究においても無作為化比較試験と類似した結果が得られるという概念である。 データとしては累計100万人単位の複数の健康保険組合が所有する、健診データ(受検の有無、健診受検者においては健診結果)と、医療機関受診データ(病名、処方履歴を含む)を紐付けることにより、健診と疾患発生との関連を推計する。 本研究は、生活習慣病の一次予防効果に対する、特定健診の役割についてのエビデンスを社会に提供する
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度初頭に学内倫理委員会の承認を得た。これを受けてプロコール論文の骨子(組み入れ基準、除外基準、解析方法など)を練った。また、予備的な解析を行い、その結果を日本公衆衛生学会総会にて発表した(研究発表の項を参照)。 概要で述べたように、Target trialとそのプロトコール作成が本研究の鍵である。本来の計画では年度中にプロトコール論文の作成と受理を目標としていたが、解析箇所において慎重に対処すべき箇所が見つかり、その対策に時間を割かれた。具体的には、それまで健診を受けていなかった人がある年度に健診を受けた際には打ち切りとして対処をする。しかし、この打ち切りはランダムに発生するものではない可能性があり(例えば健康状態悪化への不安など)、統計的には「情報あり打ち切り」に相当することを念頭に置いて計画を策定する必要がある。Inverse Probability Censoring Weights法はそのような情報あり打ち切りに対処する方法であるが、打ち切られる確率を得られた共変量などを用いて計算する必要がある。一方で、打ち切りを予測する共変量をどのように選択するかによって結果が異なるが、この共変量(途中からの健診受検を予測する変数)をデータソースからどのように客観的に選択するかが困難である。現在までのところ、有向非巡回グラフを用いて情報を整理し、変数選択のアルゴリズムであるLASSOを用いることでこれが可能ではないかとの着想を得ており、この方針が妥当かを検討している。これが解決すればプロトコール論文のおよそが決定する。
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Strategy for Future Research Activity |
先に述べたような方法で打ち切りを予測する確率が適切に算出できるかを、早期に共同研究者と相談し、方針を決定する。その後にプロトコール論文を作成する。論文の作成及び投稿は夏頃を目安とし、受理を今年12月までを目標とする。受理され次第、そのプロトコールに基づきデータ解析に着手する。
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Research Products
(9 results)