2020 Fiscal Year Annual Research Report
炎症促進性細胞死パイロトーシスの代謝産物による制御
Project/Area Number |
20H03955
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
秋 利彦 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (60304474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船越 丈司 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (40444715)
則竹 香菜子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特任助教 (40758067)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パイロトーシス / 免疫細胞 / 解糖系 / ガスダーミン / 代謝物 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画初年度の本年度は、炎症応答研究に汎用されるマウスマクロファージ細胞株RAW264.7を用い、リポポリサッカリドを刺激とした炎症促進性細胞死を誘発する系を用いて、特に解糖系によるパイロトーシス 制御機構について研究を行なった。細胞外グルコース濃度が高くなるにつれパイロトーシスが強まり、解糖系阻害剤である2-デオキシグルコースでパイロトーシスが抑制されたことより、解糖系がパイロトーシスを正に制御していることがわかった。解糖系の副産物であるメチルグリオキサールが生じており、この分子による低酸素誘導性転写因子(HIF)の制御が解糖系によるパイロトーシス制御の一端を担っていることも判明した。さらに、このパイロトーシスの実行因子であるガスダーミンDの遺伝子発現自体が2-デオキシグルコースにより抑制されることを見出した。興味深いことに、同時にガスダーミンEの遺伝子発現は上昇していた。様々な条件で検討したところ、ガスダーミンDとガスダーミンEの遺伝子発現は逆相関しており、片方がパイロトーシスの実行因子として働くときはもう片方が働かないように厳密に制御されていることを示唆するものであった。ガスダーミンDによるパイロトーシスとガスダーミンEによるパイロトーシスは、実行機構は互いによく似ているが、実行因子が異なる。すなわちガスダーミンDは炎症性カスパーゼ1、11により切断活性化される一方で、ガスダーミンEはアポトーシス誘導カスパーゼであるカスパーゼ3により切断活性化される。前者は炎症時に、後者は抗がん剤によるがん細胞の死滅などに関係している。この二つのガスダーミン分子がそれぞれ適切な場所で働くように遺伝子発現レベルでコントロールされていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、解糖系によるパイロトーシス の制御と、それを担う代謝産物の一つとしてメチルグリオキサールを同定することができた。これらを国際英文誌に発表することが出来、進捗状況は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
ガスダーミンDとガスダーミンEが互いに排他的な遺伝子発現制御を受けていることが判明したことを受けて、その分子機構について解析を行う。具体的には、それを担う転写因子の同定を目標とする。ガスダーミンDの遺伝子発現を正に制御する転写因子としてすでにIRF2が報告されているが、我々の実験結果ではIRF2はこの制御には関与していないものと思われた。従って、IRF2ではない他の因子による制御である可能性が高く、その因子の同定を試みる予定である。
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