2020 Fiscal Year Annual Research Report
自動車運転行動を支える知覚認知機能の熟達過程および加齢効果の解明
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20H04056
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
瀬谷 安弘 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 准教授 (30454721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠田 博之 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (40278495)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 走行速度知覚 / 予測スキル / 熟練効果 / 加齢効果 / 知覚認知トレーニング / ベクション |
Outline of Annual Research Achievements |
車の走行時に生じる景色の流れ(オプティカルフロー)に基づく走行速度知覚および事前の視覚情報に基づいた危険の予測スキルに着目し,これらの基礎特性,熟達過程,加齢効果の解明を目的とし,本年度では特に走行速度知覚に着目し,①ランダムドットによるオプティカルフローを用いた身体移動感覚(ベクション)に関する研究,②実映像を用いた移動速度知覚に関する研究,③自動車走行速度の推定に利用される感覚情報に関する調査に取り組んだ. テーマ①では,垂直方向に移動するランダムドットを参加者に呈示し,知覚される身体移動速度および物体移動速度に基づき,ベクションの主観量を評価させた.ドットの色を操作し,白,赤,緑,青,シアン,マゼンタ,黄色のいずれか1色(単色)または2色(複色)のドットで刺激を構成し,色の影響を検討した.結果は,特に複色条件において,白色条件よりもベクションが強くなる傾向を示した. テーマ②については,事前にビデオカメラを用いて撮影した前進移動中の視野映像から,再生速度および表示範囲を操作した映像を作成し,その映像に対する知覚速度を参加者にマグニチュード推定法を用いて回答させた.結果は,再生速度が速くなるほど,知覚される速度は速くなること,一方で,周辺情報が制限された場合には,知覚される速度が遅くなることを示した. テーマ③では,20代から60代までの自動車免許を有する男女500名を対象に,自動車運転時に視覚,聴覚,触覚を通じて利用可能な走行速度に関わる手がかり情報(例えば,スピードメータや車体の振動など)に対する意識調査を行った.結果は,いずれの年代の運転ドライバーにおいても,走行速度の認識において,オプティカルフローが重要であると考えていることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ感染症の拡大に伴い,参加者の募集や実験機材の制限等,実験実施に厳しい制約が生じたものの,走行速度知覚については当初予定していた心理物理実験を十分に行うことができた.また,これまで視覚研究の知見から走行速度知覚におけるオプティカルフローの重要性が指摘されてきたが,意識調査においてもこれを支持する知見が得られたことから,本研究の意義をより明確にすることができた.結果として,本研究の最終的な目的に向けて十分に研究を進展させることができたと考えている.ただし,予定していた学会や研究会が中止になったことや,大学業務の増大,本実験の実施が当初の予定よりも大幅に遅れたため,研究成果の発表には遅れが出ている.次年度以降にこの点を改善する.
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Strategy for Future Research Activity |
走行速度知覚の実験手法については十分にその有効性・妥当性を検証することができたため,高齢者による走行速度知覚の実験に発展させる.これに並行し,走行速度知覚の客観的な指標の選定にも取り組み,高齢者でのより効率的な走行速度知覚の測定に向けた研究にも取り組む.現在,予測スキルに関する実験準備も進めており,予備的な検討まで完了している.このテーマについても併せて研究を進めていく.
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