2021 Fiscal Year Annual Research Report
ハムストリングス肉離れの発生に関与する筋構造と走動作の特徴
Project/Area Number |
20H04067
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤井 範久 筑波大学, 体育系, 教授 (10261786)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 疾走動作 / 下肢動作 / 大腿二頭筋 / 半膜様筋 / 肉離れ / 伸長速度 / 筋張力 / 筋間差 |
Outline of Annual Research Achievements |
スポーツ傷害の一つであるハムストリングス肉離れは,走動作中に頻発するため,多くの先行研究において走動作が分析され,走動作中のハムストリングスの筋腱動態が明らかになってきている.しかし,筋線維の長さ,伸長速度,発揮張力などの筋腱動態と筋の構造的特性との関連,下肢や体幹の運動と筋腱動態の関連は明らかになっていない.そこで2021年度は下肢や体幹の運動と筋腱動態との関連を検討した.40名の大学男性アスリート (サッカー選手12名;野球選手15名;陸上短距離選手13名)を研究対象者とし,三次元動作分析装置と地面反力計を用いてバイオメカニクス的データを取得した.その後,角度入力による身体運動のシミュレーション手法を用いて,大腿二頭筋長頭と半膜様筋の筋腱動態に影響する骨盤-下肢関節の動作的特徴を検討した.その結果,大腿二頭筋長頭と半膜様筋の筋腱長および筋腱伸長速度を増減させる動作として,骨盤-下肢関節の中でも,膝関節の関節角度,関節トルク,および関節トルクパワーが最も大きな要因であることを明らかにすることができた.しかし,大腿二頭筋長頭および半膜様筋の一方の筋腱長および筋腱伸長速度を選択的に増減させる動作は抽出できなかった.加えて,筋張力や張力-長さ-速度特性の変動に大腿二頭筋長頭と半膜様筋の筋間差は認められなかった.これらのことから,ハムストリングスの中でも大腿二頭筋長頭で肉離れが好発する要因としては,2021年に検討した筋の構造的特性が大きいことを明らかにすることができた.また高速度の走動作中に急減速する際にもハムストリングス肉離れが発生することも多く,その要因を明らかにするための実験設定を検討した.具体的には減速(ブレーキ)のきっかけを光刺激で与えることが適切であることを確認した.なお本研究は,筑波大学体育系倫理委員会の承認を得た上で実施したものである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度には筋の構造的特性と筋腱動態との関連を検討し,2021年度は,実施予定であった下肢や体幹の運動と筋腱動態との関連について実験,分析,考察を終えることができた.研究成果については,国際学会で発表を行い,意見交換を踏まえたうえで国際誌に論文投稿中である.2021年度に実施予定であった減速動作については,予備実験を踏まえて実験設定を確定することができている.また,減速動作中の筋腱動態に関する研究倫理審査申請を行い,筑波大学体育系倫理委員会から研究実施の承認を得ている.そして三次元動作分析装置と地面反力計を用いて,現時点で10名の研究対象者について身体特徴点に貼付した赤外線反射マーカーおよび接地時の地面反力を取得できている.しかし取得できたデータが10名であることから今後も研究対象者を増やす必要があり,「(3)やや遅れている」と自己評価した.
|
Strategy for Future Research Activity |
減速動作も含めて走動作中の筋腱動態の推定手法については確立しており,今後,研究対象者を増やすことで,当初の計画通りに研究を進めることが可能と考えている.さらに,これまでの研究においては,最大努力における走動作を対象に研究を進めてきたが,2022年度は最大下における動作においても,これまでに得られた知見が当てはまるのかを検討を進める.その際には,トレッドミル上での走動作計測と筋電計測を組み合わせることで,最適化計算によって推定する筋活動の妥当性を確認する.
|
Research Products
(3 results)