2021 Fiscal Year Annual Research Report
筋腱の力学的および代謝的特性を踏まえたトレーニング法およびメンテナンス法の開発
Project/Area Number |
20H04070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 啓太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70323459)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 筋スティッフネス / 腱ヒステリシス / 超音波 |
Outline of Annual Research Achievements |
(研究1)ヒラメ筋におけるアクティブ筋スティッフネスと伸張反射との関係:本研究では膝屈曲位で腓腹筋の貢献を小さくした条件で、ヒラメ筋のアクティブ筋スティッフネスの定量を試みた。その結果、腓腹筋内側頭での結果とは異なり、遅い角速度条件でのアクティブ筋スティッフネスが最も高かった。さらに、腓腹筋内側頭と同様に、ヒラメ筋においてもアクティブ筋スティッフネスは伸張反射の影響を受けないことが明らかになった。 (研究2)弛緩時間が腱ヒステリシスに及ぼす影響:腱ヒステリシスに及ぼす弛緩時間については、これまでに詳細な検討がなされていない。そこで本研究では、弛緩時間を0.3、0.5、0.7、1.0、3.0、5.0秒の6条件を設定し、腱ヒステリシスを測定した。その結果、弛緩時間が1秒以上の条件では腱ヒステリシスに差は認められなかったが、1秒未満の条件では弛緩時間が短くなるほど腱ヒステリシスが有意に大きい値を示した。従って、介入研究などで腱ヒステリシスを測定する際には、特に弛緩時間を1秒未満で設定する場合には、介入前後での弛緩時間を揃える必要があると言える。 (研究3)指圧刺激が膝蓋腱およびアキレス腱の血液循環に及ぼす影響:我々の最近の研究で、鍼刺激による血液循環変化が、アキレス腱に比べて膝蓋腱ではほとんどみられず、その要因として膝蓋腱周辺の痛み閾値がアキレス腱周辺よりも低いことが挙げられた。それを実証するために、痛みを伴わない指圧刺激による血液循環変化を両腱で比較した。その結果、指圧刺激による血液循環変化は、膝蓋腱およびアキレス腱で同程度観察され、我々の仮説を支持するものであった。さらに、アキレス腱における血液循環変化は、心拍数変化と正の相関関係が見られ、代謝亢進によるものである可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
収縮条件下での筋スティッフネス(アクティブ筋スティッフネス)について、これまでの研究で対象にしてきた腓腹筋内側等に加えてヒラメ筋でも検討が可能になり、筋線維組成などの生理学的な側面からアクティブ筋スティッフネスについてより詳細な研究を展開できつつある。さらに、腱スティッフネスに比べて報告数が極めて少ない腱ヒステリシスについて、その測定法に一石を投じる知見を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
実際のスポーツ競技(特に陸上競技)での「バネ」の機能的役割や可塑性を明らかにするためには、これまで研究を進めてきた足底屈筋群だけでなく、膝伸筋群でも同様の測定法を確立する必要がある。腱の力学的特性については、腱スティッフネスだけでなく腱ヒステリシスについても知見を集積する必要がある。さらに、障害予防の観点から、特別なライセンスや用具を必要としない指圧刺激の腱メンテナンス法として確立していくことを目指したい。
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Research Products
(4 results)