2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H04071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八田 秀雄 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60208535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北岡 祐 神奈川大学, 人間科学部, 准教授 (30726914)
星野 太佑 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (70612117)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、乳酸による代謝的適応メカニズムの解明を出発点として、最終的には乳酸を活かした運動トレーニング方法を開発することを目的とする。本年度の研究から、乳酸の長期投与によって、マウス骨格筋から単離したミトコンドリアの呼吸機能が高まることが明らかとなった。したがって、乳酸はミトコンドリアの量的な変化だけでなく質的な変化も引き起こす可能性が示唆された。さらに、運動時の乳酸の産生量が運動による適応に重要な要因であるのではないかという仮説のもと、運動時の乳酸産生量を血中乳酸濃度から算出する方法の確立を目指して実験を行った。乳酸をマウスの腹腔内に投与し、継時的に血中乳酸濃度を測定することで全身の乳酸取り込み能力を求めた。次に、2分間走2分間休息の運動漸増負荷試験(10~40 m/min)を行い、各運動強度にて血中乳酸濃度を測定した。運動中の血中乳酸濃度のデータと事前に求めた乳酸取り込み能力を組み合わせることによって、各強度における乳酸産生量を算出した結果、持久的トレーニングは、同強度の運動時の乳酸産生量を低下させることが明らかとなった。乳酸産生量と運動後の筋グリコーゲン濃度の減少量やシグナル分子のリン酸化量との間に関係性が見いだせたことから、血中乳酸濃度から乳酸産生量を算出する方法を確立できたと考えられる。また、骨格筋に発現する2種類の乳酸トランスポーター(MCT1およびMCT4)の阻害によって、それぞれ20 m/min、40 m/minでの運動持続時間が低下することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血中乳酸濃度から乳酸産生量を算出する方法を確立できたことから、おおむね順調であると言える。一方で、乳酸トランスポーターの阻害は運動能力を著しく低下させてしまうことや、産生された乳酸は即座に細胞内や隣り合った細胞において利用されることを考慮して研究を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
乳酸産生量が骨格筋の適応に与える影響を明らかにするため、運動時の血中乳酸濃度が低いことが明らかになっているperoxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator-1 (PGC-1) alphaの過剰発現マウスを用いて実験を実施する。PGC-1alpha過剰発現マウスはミトコンドリアが多く、持久的能力に富んでいることから、運動時に乳酸産生量や血中乳酸濃度が増加しにくい。そのようなマウスにおいて、運動による乳酸産生量の変化と細胞応答を明らかにすることで、乳酸の運動適応への役割をさらに解明できると考えられる。
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