2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a gait modification system using an unconscious motor learning system: To extend healthy life expectancy
Project/Area Number |
20H04097
|
Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
平島 雅也 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 主任研究員 (20541949)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 運動学習 / 無意識 / 歩行 / 誤差 / 適応 / モーションキャプチャ / アバター / VR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近年、心理学・神経科学の分野で注目が集まっている無意識的な運動学習系の機能を活用し、ロバストな運動学習支援システムを開発することを目的とする。 本研究では、従来、自由度の低い腕到達運動を対象にして行われてきた適応実験パラダイムが、多自由度の全身運動でさえも無意識のうちに変容させることができるのかについて検討した。トレッドミル上で歩く被験者の動きをモーションキャプチャで計測し、VR空間のアバターの動きとしてリアルタイムに提示することで、被験者が主体感を失わずにVR空間内で運動課題を遂行できるシステムを構築した。VR空間内でアバターがレール上を歩く課題を行っている最中に、アバターの歩隔が実際よりも狭くなる変換を徐々に加えたところ、被験者は無意識のうちに歩隔を広げてしまうことが確認された。また、学習条件として、1)誤差の量が定量的にフィードバックされる条件と2)課題達成の可否のみがフィードバックされる条件では、後者のほうが、学習した記憶を想起しやすことがわかった。従来のジェスチャーや言語を用いた指導では常に不確実性が残ってしまうが、このような適応実験パラダイムを用いる方法は、狙った方向に確実に動作を変化させることができるという点において優位性がある。 上記実験では、トレッドミルの前に置かれた大型スクリーンにVR空間を提示していたが、実験室外の環境でも同様の実験を行うために、装着型のヘッドマウントディスプレイへのリアルタイム映像提示装置の開発にも着手した。光学式モーションキャプチャでは大掛かりな装置となってしまうため、慣性式モーションキャプチャを用いた可搬性の高い計測装置を用いたシステムの開発を推進している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、実験的に与えた誤差とは反対方向に動作を修正するはずという仮説を、大自由度の歩行動作において精度よく検証するための実験系を構築し、狙った方向へ確実に動作を変化させられること、また、それが無意識のうちに生じることを示すことができた。さらには、学習条件の違いが、運動記憶の想起に影響を与えることまで示した。同様の実験を実験室外で行うためのシステム開発にも着手できており、次年度中には実験室外における長期的学習実験にも着手できると思われる。以上のことから、研究は順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、このようにして誘発した適応が、日常歩行動作にまで影響するかどうかを調べることを目的とする。同様の適応実験を実験室外でも行えるようにするために、慣性式モーションキャプチャとVRヘッドマウントディスプレイを組み合わせた可搬式実験システムの構築をさらに推し進め、健常者を対象にした長期間の適応実験を行う。また、適応実験で形成された運動記憶が日常生活の中でも発揮されているかどうかを調べるために、慣性式モーションキャプチャを用いた長時間ロガーシステムの構築を行い、適応実験の前後で日常歩行動作に変化が生じるどうか検討する。
|