2021 Fiscal Year Annual Research Report
食事由来脂質の吸収/排泄バランスによる生体防御システムの理解と疾患治療への応用
Project/Area Number |
20H04100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山梨 義英 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20582018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳田 慶太 筑波大学, システム情報系, 助教 (50762176)
豊田 優 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (80650340)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脂質トランスポーター / 消化管吸収 / 胆汁排泄 / 非アルコール性脂肪性肝疾患 / トランスレーショナルリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
NPC1L1とABCG5/G8はステロールの消化管吸収や胆汁排泄を制御する輸送体として同定され、互いに逆方向の輸送を担う。申請者の研究から、これら輸送体はステロールのみならず様々な脂質・脂溶性栄養素の吸収/排泄も制御し、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などの脂質関連疾患の発症・進行に深く関わることが明らかとなってきたが、その全体像の解明には至っていない。そこで、本研究は、両輸送体の生理的基質を網羅的かつ定量的に探索・同定し、両輸送体の活性バランスに基づく食事由来脂質の吸収/排泄制御機構の体系的理解を目指すこととした。また、NAFLDモデルマウスを用いた解析やヒト血液検体を用いた臨床的解析を通じて、同定された基質がNAFLDの発症・進行に及ぼす影響を明らかにし、脂質の体内動態と生理活性を考慮した病態生理学的に影響力の大きい新たな治療標的脂質を見出すことも目指している。 研究開始2年目にあたる令和3年度は、研究開始初年度に見出したNPC1L1の新規基質(12種類)がNAFLDの病態進行に及ぼす影響をNPC1L1遺伝子改変マウスを用いたNAFLDモデルマウスにより検討した。新規基質群を混合した高脂肪食で各マウスを飼育した結果、ヒトと同様に肝臓と小腸でNPC1L1を高発現する肝臓特異的NPC1L1トランスジェニックマウスにおいてのみNAFLDの増悪を認めた。したがって、これら新規基質の中に肝臓および小腸NPC1L1依存的にNAFLDを増悪させる化合物が含まれることが示唆された。また、昨年度から収集しているNAFLD患者の血液検体を用いて各基質の血液中濃度の測定を順次行うとともに、NAFLDの進行度を反映する各種臨床マーカーや検査値データの収集を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NAFLDを増悪させうる新規NPC1L1基質の発見につながる重要なデータが得られたため。また、ヒト血液検体を用いた臨床的解析を実施するにあたり必要となる基盤情報の取得が進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
新規NPC1L1基質群(12種類)の中からNAFLD増悪を引き起こす原因脂質の同定を進めるとともに、臨床的解析により、見出した原因脂質の血中濃度とNAFLDの病態進行度との相関解析を行い、ヒトにおける当該脂質の病態生理学的重要性について検討を進める。また、当該脂質がABCG5/G8の基質となりうるのかについて、ABCG5/G8のin vitro機能評価系を用いた解析やABCG5/G8遺伝子欠損マウスを用いたin vivo解析により検討し、NPC1L1とABCG5/G8による輸送活性バランスを解析する。
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