2022 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の質的変化に基づく肺組織老化・疾患促進機構の研究:細胞老化の視点から
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20H04116
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
杉本 昌隆 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (50426491)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 肺気腫 / 転移性肺がん / セノリシス / COPD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、加齢による細胞の質的変化が組織老化や疾患を促進する機構を明らかにすることにより、老化細胞の機能を標的とした呼吸器疾患に対する革新的な創薬基盤を確立することを目的とする。老化は様々な疾患のリスクを増大させる。現在、世界で死因の上位を占める呼吸器疾患も加齢とともに罹患率が上昇するが、その原因については明らかになっていない。代表者は以前に、独自に樹立した老化細胞除去マウスを用いて、肺組織の加齢性変化に細胞老化が重要な役割を持つことを明らかにした。本研究計画では肺組織内の老化細胞に着目し、それらが呼吸器疾患の発症や進行にどの様に関与するのか、複数の呼吸器疾患モデル(①肺気腫モデル、②転移性肺がんモデル)を用いて解析を行ってきた。②転移性肺がんモデルについては昨年度論文報告を行った。当該年度は、①肺気腫モデルの解析を行った。以前の研究成果から、動物モデルにおいて肺組織の老化細胞が肺気腫病態を増悪化する因子であり、セノリシス(老化細胞の除去)により肺気腫の緩和が可能であることが明らかになっており、老化細胞が肺気腫治療の有効な標的であることが期待されたが、既に気腫を発症したマウスにおいては呼吸機能を回復することはできなかった。しかしながら、セノリシスを行った気腫肺では肺組織の再生が促され、細胞移植と併用することにより肺気腫モデル動物において呼吸機能の回復が認められていた。当該年度は、培養細胞を用いた実験を進め、老化細胞は非細胞自律的に肺組織前駆細胞の活性に影響を与えること、さらに肺再生に重要であることが報告されている前駆細胞由来分泌因子について発現解析を行った結果、老化細胞はこれら分泌因子の発現に大きく影響を与えることを示す結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
転移性肺がんモデルの解析は計画が順調に進捗し、前倒しで計画を進めて論文化することが出来た。しかしながら2022年に代表者が異動となり、マウスコロニーを閉じる必要が生じ、動物実験を行うことが困難とったため他の計画に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
代表者の異動に伴って処分せざるを得なかったマウスコロニーの回復を行い、計画の遂行に必要なマウスを入手可能な体制を一刻も早く築く。 これまでの培養細胞を用いた解析から、細胞老化を起こした肺組織間葉系細胞培養上清存在下で肺組織前駆細胞を培養すると、増殖細胞培養上清刺激時と比較して明らかに細胞の分化に影響が見られていた。先行研究から、肺再生には前駆細胞由来の因子の活性が重要な役割を持つことが示されており、当該年度の結果から老化細胞培養上清はこれらの発現に影響を与えることが明らかになった。今後は老化細胞が肺組織前駆細胞の活性に影響を与える機構について解析を行い、老化細胞の作用点について探索を行う。
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Research Products
(7 results)