2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of the support system for preventing mental health disorder
Project/Area Number |
20H04131
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
竹中 晃二 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80103133)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 哲朗 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (00769979)
山蔦 圭輔 神奈川大学, 人間科学部, 准教授 (80440361)
松井 智子 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (40845062)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | メンタルヘルス不調 / 予防措置 / 自助方略 / デルファイ法 / メンタルヘルス・プロモーション |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,メンタルヘルス問題(疾患を含む)は,個人,家族,組織,そして社会において大 きな負担となっており,解決しなければならない喫緊の課題である。先進諸国においては,専門家がおこなう対症療法とは別に,地域,職域,学校において,予防措置に関わる具体的介入が行われ,さらに予防を超えるプロモーション活動も実践が進んでいる。本研究では,重篤なメンタルヘルス不調が際立つ若年・中年勤労者を対象に,メンタルヘルス不調に導く前駆段階である心理的状態『なんとなく憂うつな気分』(気分症状の不調)を改善させることを目的に,初年度として主に,(1)専門家(精神科医,臨床心理士など)および一般成人の各グループを対象に,気分改善への役立ち度および実行可能性の高い予防的自助方略の内容をデルファイ法を用いて選定すること,および(2)行動変容技法としての実行意図手法(イフ・ゼン・プラン)を用いた予防的自助方略の習慣形成を促すこと,に着目した研究を実施した。本研究では,重篤化を避ける「予防」の観点で日々の「気分症状の不調」の改善に注目し,実行可能で受け入れが容易な自助方略について検討し,この「気分症状の不調」の改善は,他者からの支援ではなく,自助に求め,その習慣化を目的としている。メンタルヘルスを扱う専門機関の負担は,対象者の数が急増しているためにこの自助の観点は重要である。また,新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う自粛生活に伴うストレスの対処についても具体的なストレスマネジメント方策およびメンタルヘルス・プロモーション活動を紹介し,評価をおこなった。これらの成果は,複数の学会誌論文に掲載されたほか,学会および地域での発表を通じて社会に還元できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
メンタルヘルス問題の予防に果たす自助方略とは,人が精神疾患,またメンタルヘルス問 題に対処,あるいは症状を緩和するためにおこなう,自身による活動を指す。メンタルヘルスの障害は,数種類の異なる症候群が存在するというよりも,むしろ深度の連続体とみなされ,段階的なケア・モデルに従えば,精神疾患という診断を受けない閾値下,または亜臨床的なメンタルヘルス不調を抱える対象者に対しては自助方略の実践が症状軽減のために有効である。本研究の初年度では,メンタルヘルス問題の予防措置に関する従来の文献を十分に確認したのち,重篤なメンタルヘルス不調が際立つ若年・中年勤労者を対象に,メンタルヘルス不調に導く前段階の心理的状態『なんとなく憂うつな気分』(気分症状の不調)を改善させることを目的に,役立ち度および実行可能性が高い自助方略を選定できた。初年度では,コロナ禍の中にもかかわらず,研究の成果を学会発表や学会誌への掲載を果たし,これらの目的を十分に果たしたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては,予防的自助方略実践の習慣化に関わる方法論の検討を中心に,令和2年度で選定した自助方略について,その活動を人々に動機づける局面と動機づけから実際の行動実践に結びつける実践の局面に分け,それぞれの介入方法を検討する。その理由として,気分の不調を改善する行動を実践しようとする意図(「おこなうつもりである」の強化:動機づけの局面)と,たとえ動機づけられていたとしても実践が習慣化(「おこない続ける」の強化:実践の局面)にまでいたらないためにその解決を促すためである。その方法としては,Health Action Process Approach(Schwarzer, Lippke, & Luszczynska, 2011)として知られる,意図と行動のギャップを解消する2局面の介入モデルを採用す る。このモデルを採用することで,気分の不調を改善する自助方略を単に推奨するだけでなく,それらの実践および習慣化が強化される。
|
Research Products
(28 results)