2020 Fiscal Year Annual Research Report
有機-シリコン混成回路による高機能・超低価格使い捨てヘルスケアセンサの実現
Project/Area Number |
20H04156
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 高史 京都大学, 情報学研究科, 教授 (20431992)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小笠原 泰弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (30635298)
栗原 一徳 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (30757414)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 有機トランジスタ / センサ / トランジスタアレイ / ハイブリッド回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機トランジスタにおいては、ロバストな回路を設計するための基盤となる回路シミュレータ向けのデバイスモデルが現状確立していない。また、有機トランジスタは、経時的に電流電圧特性が変動することが知られており、これを考慮して安定な動作を実現する回路を設計する必要がある。そこで今年度は、有機トランジスタの電流電圧特性を、ソース・メジャー・ユニットを用いて詳細に測定した。また、その特性をシミュレータ上で正しく再現できる数式ベースのデバイスモデル開発を行った。さらに、同じトランジスタの特性を日を変えて複数回測定することで、特性劣化についてのデータを取得した。この結果をもとに有機トランジスタの特性劣化機構について考察し、キャリア捕獲を原因とすると考えモデル化した。 また、有機トランジスタを用いてアナログ回路やディジタル論理回路のモジュールの構成に向けて、単体のトランジスタに加えて、p型とn型複数の有機トランジスタの組み合わせからなるCMOS回路としての特性評価や回路としての動作確認等についても着手した。その際、n型トランジスタの出力インピーダンスが高い一方でp型トランジスタのリーク電流が大きいことから、十分な出力振幅が得られない場合がある事がわかった。このような環境下で動作中の回路の過渡電圧を回路への侵襲を少なく測定するための複数の測定方法を検討し、低リーク電流プローブが適切であると考えられたため入手を試みたが、コロナウィルス感染症の広がり等により入手困難であることが判明し、入荷を待つこととした。このため、翌年以降に実施を計画していたセンサおよびセンサに付随して使用される周辺回路の有機トランジスタによる構成や、レイアウトの工夫によるトランジスタの性能向上手法についての検討を先行して行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機トランジスタモデルを用いる回路設計での基盤となる、回路シミュレータ上で動作する有機トランジスタモデルを作成した。また、トランジスタモデルの特性劣化を観測し、特性劣化が半導体および絶縁膜近傍のキャリア捕獲によるとする劣化モデルを考案し、有機トランジスタモデルへの組み込みを行った。これらのモデルを用いると、有機トランジスタを用いる回路の特性の予測が可能となることから、今後の試作回数を減らし、プロジェクトを効率よくすすめることができる。 作成したトランジスタモデルを用いて、有機トランジスタを用いるメモリ回路についても検討を行った。事前のシミュレーションにより回路を構成するトランジスタのサイズと型(p型, n型)の使い分け等を回路シミュレータにより最適化し、低電圧でも安定に動作する有機メモリセルを実現できた。 一方で、CMOS回路としての特性評価やアレイ回路としての動作確認においては、プローブの入手が困難であったことから、これらの検討については次年度以降に延期させることとした。その分の時間を有効に活用し、翌年の実施予定項目を先取りする形でトランジスタモデルの精度向上やトランジスタ特性の劣化メカニズムについての考察を深めることができた。当初の計画とは取り組み順が前後しているものもあるが、全体の達成度としては概ね当初の計画どおりであり、順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
プローブが入手困難となったことにより、来年度以降に実施することとしたCMOS回路としての特性評価やアレイ回路としての動作確認を、できるだけ速やかに実施する。また、有機トランジスタを用いるバイタルセンシングの他に、無線やビデオカメラ等を用いる複数のセンシング技術を併用し、これらの情報を統合することで、本研究の狙いである低コストでありながら、より精度の高いヘルスケアセンシングが実現できる可能性がある。当初の計画をすすめるとともに、チャレンジングであるが、より手軽でより利便性高くセンシングができる方法についても検討を加えたいと考えている。
|
Remarks |
情報回路方式(佐藤高史)研究室 ウェブページ http://easter.kuee.kyoto-u.ac.jp/ 研究成果を論文誌や学会にて発表した際に、その内容を平易にまとめている。
|
Research Products
(10 results)