2020 Fiscal Year Annual Research Report
同軸型アダプティブ生体センサと機械学習による高度生体電磁偽装物検出技術の創生
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20H04189
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
前田 忠彦 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (40351324)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生体認証 / 指紋認証 / 生体検知 / 電磁応答シグナチャ / CSRR / LOF / 機械学習 / SVM |
Outline of Annual Research Achievements |
生体検知センサの高度偽装物に対する検知精度向上を目的に,CSRR 構造のリング数を増加させ,人体指との接触面積を増加した多重同軸型生体検知センサを提案した.また,実験により提案センサと従来センサの検知精度を比較することで,提案センサの有用性を確認した.平均差・類似度を用いた判別平面上で,人体指と厚さ0.1 mm のシリコーンゴムを用いた偽装指の分布領域の変化を指標とする改善効果の評価を実施した.その結果,従来センサと比較すると平均差においては1.4 倍,類似度においては7 倍,分離距離が増加することを確認した.また,提案センサは周波数範囲を1~8 GHz とすることで類似度においては検知精度の向上を図れることを示した.また,センサの小型化とセンサ共振周波数の最適化のための基礎的検討を行い2021年度のセンサ検討方針の策定を完了した. 機械学習を用いた生体検知判定アルゴリズムの高度化に関しては,LOF 法における特徴量選定の改善を行い,従来手法に加えて2 個の新たな特徴量を提案し,実装を行った.この提案特徴量に対して偽装指検知精度評価を行い,偽装物として皮膚ファントム(0.3 mm 厚) を利用した偽装指については従来手法より提案手法の検知精度が優れていることを明らかにした. さらに,高度偽装物検出に対応するために,CSRRセンサの近接領域の材質と寸法の基礎的検討を進め,極薄保護フイルムの極限である条件の下で採用する複数の判定アルゴリズムの基礎的検討を実施した.人体指と偽装指がCSRRセンサの通過特性に与える影響の特徴を分析することで,高度偽装物検出に適する特徴量の検討を行い,2021年の具体的な評価検証実験のためのソフトウエア基本部分の実装を完了した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高度偽装物検出のためには,1) センサ構造最適化の研究と,2)判定アルゴリズムの高度化という両面の成果が必要である.センサ構造最適化の研究では,多重同軸生体検知センサのリング数を増加する構造の提案をおこない判定精度改善の実験的評価を完了した.また,高度偽装物検出のためには,センサ共振周波数の選定が重要な要素となるため,高周波帯域での電磁シグナチャ変化をより高感度で検出する構造の探索を進めた.具体的には,高度偽装物に対する検出精度向上のためCSRR構造の小型化を図ったセンサ構造を検討し,その基本特性を明らかにした.さらに,多重同軸型生体検知センサの小型化の検討では,地板寸法を従来センサよりも50%削減した構造について電磁応答特性と検知精度への影響評価を完了した.小型化した構造のセンサを試作し,二次元判別平面で比較を行い小型化前と同等の検知精度が得られることを確認した. 判定アルゴリズムの高度化に関わる研究では,電磁応答シグナチャによる生体検知の検知精度の時間的安定性評価の研究を進めた. 2020年度の研究では,5週間にわたる本人指測定データを用いて, テンプレートを本人指テンプレートとした場合の2次元平面法による生体検知精度評価を行った. その結果, 2つの判別指標に大きな差は確認できず, 厚さ0.3 mm 程度の偽装物に対する検知精度への影響の評価を完了した.また,2021年度のより長期の評価を実施するための基礎データを取得した.さらに,機械学習アルゴリズムの中でOne Class SVMを用いた偽装物検知方法の基本プログラム実装と動作確認を進め,2021年度の本格的な特性評価の準備を完了した.
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Strategy for Future Research Activity |
高度偽装物に対する対策として,「本人指の局所的電磁応答を指紋情報と同時に記録する判定方法」を採用し,同軸型深度可変センサの検知精度を評価する.さらに,LOF法を発展させ人体の個人差による誤検知を低減するための「機械学習による多元判定」ソフトウエアの実装を完了し,「高度生体偽装物検出システム」を試作・評価する.また,2値判定に加えて3値判定についても検討を進める.また,人体の電磁応答特性の周波数特性の取得範囲について検討を進め,1) 本人指を学習データとして採用する本人指テンプレート方式の採用による高度偽装物の検出精度改善を進める.さらに,2) 電磁応答特性取得のための周波数帯域を低域化するための検討を進め,汎用のLSIで構成できる周波数帯域での測定データを用いた判定法の可能性について判定精度の観点から評価を進める.このための具体的手段として,これまで採用してきた電磁応答フィルタの保護フイルムの厚さと検出特性,特に検出精度の関係を明らかにする.また,センサへの偽装物接近過程の過渡的電磁応答に注目した過渡応答・多元解析処理へ機械学習を適用するため,センサの探査深度を多元判定アルゴリズムと同期して制御するプログラムを実装し,生体電磁過渡応答分析につなげる.さらに,機械学習による判定アルゴリズムの高度化を図るため,複数の機械学習アルゴリズムを実装し,偽装物判定実験を横断的に実施することで,各機械学習アルゴリズムの判定特性の特徴を明らかにしてゆく.また,これらの判定アルゴリズムの誤検知を引き起こす電磁応答測定データを詳細に分析し誤検知につながる要因を詳細に調査する.これにより個々の判定アルゴリズムの誤検知特性とその改善技報について検討を行い,総合的な判定精度の向上を図れるアルゴリズムの開発を進める.
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