2021 Fiscal Year Annual Research Report
疎行列を係数とする線形方程式の反復解法と精度保証付き数値計算法の融合
Project/Area Number |
20H04195
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
尾崎 克久 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (90434282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻田 武史 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (00339615)
相原 研輔 東京都市大学, 情報工学部, 准教授 (70735498)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 精度保証付き数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,連立一次方程式の数値解の精度保証付き数値計算にとって重要な係数行列の逆行列の最大値ノルムの上限の情報をさらに増やすことに尽力した.得られた計算結果についてはhttps://www.mathsci.shibaura-it.ac.jp/ozaki/smc_norminf.htmlで公開している.計算速度とのトレードオフを見ながらブロック計算を導入することでメモリ使用量を削減し,逆行列の最大値ノルム上限の計算に成功した.本年度に得られた結果の最大問題サイズは1,585,478となり,行列の総数は1800を超えたため,応募時の研究計画の90%を達成できたことになる. また,反復解法の精度の性能評価のためには,真の固有値がわかる係数行列の生成が必要である.よって,成分が浮動小数点数であり,真の固有値・固有ベクトルも厳密に把握可能なテスト行列の生成法の開発に成功し,一流雑誌に論文が採択された. 真の解がわかる連立一次方程式をデータとして与えると,反復解法における反復毎の全数値解の相対残差を見ることができる.真の解がわかるテスト行列を用いることにより,CG法にリスタートをかけた手法は,いくつかの行列において残差は停滞しているが,誤差の意味では改善している事例が確認できた. 行列・行列積,行列・ベクトル積を高精度に行う手法の開発にも力を入れた.行列積のエラーフリー変換という技術は,計算結果の信頼性を向上させる優れた手法として知られている.従来にはなかった計算パターンを開発することにより,行列積の回数が3,4,5,6,8,9,10回で高信頼な計算結果が得られるようになり,行列積の回数に比例して計算結果の精度が良くなることを確認した.また,この手法を多倍長数値計算に応用し,行列積,コレスキー分解の多倍長精度計算が高速に行えることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,疎行列を係数行列とする連立一次方程式の精度保証法の研究を行っており,係数行列の逆行列の最大値ノルムを知ることで,効率的な精度保証法の実現を目標としている.また,精度保証付き数値計算から得られる知見から,連立一次方程式の反復解法の発展にも寄与することも重要な課題として設定している. 本年度の成果により,suite sparse matrix collectionにある疎行列に関して,行列の総数が1,800を超え,また最大行列サイズが1,585,478となった.よって,目標となる100万元の問題の計算に成功することができた.本成果は研究代表者がhttps://www.mathsci.shibaura-it.ac.jp/ozaki/smc_norminf.htmlで公開している. 反復解法の性能評価のために固有値問題のテスト行列の作成もでき,複素固有値を持つ実行列(疎行列)の生成法の開発に成功した.行列積の高精度計算においても新しい方式の提案ができた.この成果は論文として採録され,公開されている.厳密解がわかることによる反復解法の挙動解析も行い,CG法に関して残差と誤差に関する興味深いデータを得ることができた. 高精度な行列積の計算法について,行列積の回数を指定し,それに応じた精度を持つ計算法の提案ができた.従来よりも細かな精度と速度のコントロールが可能になる. 以上により極めて順調な進捗状況と言える一方で,行列積に関する高精度計算が疎行列に特化したものではないところのみはマイナス評価と振り返っている. 総じてみると,進捗状況は良いといえるであろう.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は更なる大規模行列の逆行列の最大値ノルムの上限の計算に挑み,より大規模な連立一次方程式に対して精度保証付き数値計算が活躍できるようにする.計算における並列計算の効率の悪さを利用し,行列をブロックに分け,独立した計算で部分的なノルムを求め,最後にそれらの最大を得る手法を検討している.また,高精度な行列積の計算法についても研究をさらに推進し,行列積の回数による精度のコントロールをより精密に行える手法を開発し,論文を執筆して投稿したい.また,真の解がわかる行列をテスト行列に用いることにより,連立一次方程式の反復解法の発展に寄与することを目標とする.本来は調べることができない相対誤差の推移を見ることが可能であることを活かしたい.真の解がわかる行列をSuite Sparse Matrix Collectionにある行列から生成したもので実験に用い,GroupWise updateというリスタート方法を適用したCG法について多くの知見をえて成果をまとめたい. 次年度が研究期間の最終年となるため,研究成果の発信には最も力を入れたい.高精度な行列積に関する新しいアイデアについて論文としてまとめ,投稿・採録を目標としたい.また,真の解がわかるテスト問題により,従来知られていなかったリスタート法の有用性を世界に発信したい.成果の発信は論文のみに限らず,国際会議や国内主要会議でも研究成果の発信を積極的に行う.これらについて研究分担者・研究協力者と積極的に打ち合わせを行いながら研究を推進する.
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