2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Modeling and Multi-Physics Predicition Methods for Particulate Deposition in Jet Engine
Project/Area Number |
20H04200
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山本 誠 東京理科大学, 工学部機械工学科, 教授 (20230584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 正也 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (40548161)
福留 功二 東京理科大学, 工学部機械工学科, 助教 (70710698)
福島 直哉 東海大学, 工学部, 講師 (80585240)
守 裕也 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (80706383)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 計算力学 / 粒子付着現象 / ジェットエンジン / マルチフィジックス / モデル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジェットエンジンに吸い込まれた砂や灰の微粒子は、2000[K]近い高温の燃焼器を通過する際に溶融し、液滴となってタービンに流入する。この溶融液滴がタービンの翼やケーシング等の低温壁面に衝突すると、熱エネルギーを急速に奪われて壁面上で凝固し、付着層を形成してしまう。この現象を「粒子付着現象(Deposition)」と呼び、タービン翼の空力性能の大幅な低下や冷却孔の閉塞による壁面の溶解など、ジェットエンジンにとって致命的な影響を及ぼすことが知られている。粒子付着に関する研究は1990年代前半からNASAやジェットエンジン・メーカーを中心に行われてきたが、既存の粒子付着モデルは普遍性が乏しく、より高精度に現象を再現できる粒子付着モデルおよび数値シミュレーション手法の構築が強く求められている。本研究では、基礎実験および第一原理に基づいて高精度粒子付着モデルを新たに開発し,申請者が開発してきたジェットエンジンに対するマルチフィジックス予測コードへ実装することにより、ジェットエンジンのタービンに生じる粒子付着現象のメカニズムおよび付着特性を数値的に解明することを本研究の目的とする。 2021年度は、2020年度に明らかとなった格子法に基づく粒子付着モデルをJAXAが所有するUPACSに実装し、実際のジェットエンジン・タービン翼における粒子付着を再現した。また、粒子法による単一溶融液滴が凝固するプロセスの高度化を図り、粒子分割法を組み込むことによってフィンガー等の微細構造まで再現できることを実証した。本研究および本研究に関連して得られた研究成果は、学術論文9編、国際会議プロシーディングス6編、国際会議発表7件、国内会議発表11件の公表に結びついた。なお、JAXAにおいて2021年度に予定していた基礎実験は、新型コロナウィルスの影響により実施できなかったため、2022年度に延期した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に関する当初の計画では、2020年度の研究で明らかとなった最適な粒子付着モデルをマルチフィジックス予測コードに実装してジェットエンジンのタービン翼における粒子付着現象を再現すること、JAXAにおける基礎データの取得、格子法による粒子付着モデルの新たな提案、粒子法による新たなモデル化などを主要な研究タスクとしていた。新型コロナウィルスの影響により2020年度からJAXAでの実験実施が禁止されているたため、基礎データの取得は出来なかったが、その他の研究タスクは実施・完了できており、おおむね順調に研究が進展していると考えている。なお、基礎データの取得は、JAXAの実験禁止措置が解除され次第、これまでの計画分と2022年度に予定していた分をまとめて実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
マルチフィジックス予測コードの改造および構築に関しては、2021年度にジェットエンジン運転条件での検証を実施したので、2022年度は様々なエンジン運転条件における粒子付着現象を再現し、タービン翼における粒子付着プロセスを数値的に解明する予定である。2020年度に既存モデルの中で最適な予測性能を示すことが明らかとなった粒子付着モデル(OSUモデル)の予測特性をさらに調査することで、既存モデルの改良および新たなモデルの開発を実施する。粒子付着モデルの改良・開発に関しては、格子法、粒子法それぞれについて電気通信大学および東海大学を中心に進めて行く予定である。また、粒子の衝突条件によっては付着層が削られるエロージョン現象が生じることがあるが、付着とエロージョンが共存する条件でも予測が可能となるように、モデルおよび計算コードの改良を実施する。粒子法による粒子付着モデルでは、2021年度に粒子分割法を導入して予測精度の向上を図ることができたが、最適なモデル・パラメータは不明なままであるため、これを明らかにすることによって、モデルの予測精度をさらに高める予定である。2022年度中に、新たに提案する粒子付着モデルのUPACSへの実装が完了できればと考えている。新型コロナウィルスの影響によりJAXAでの基礎データ取得が遅れているが、実験禁止措置が解除され次第、データ取得に鋭意努める予定である。JAXAが所有する高温ガスジェットノズルを用いて基礎実験を実施し、実験条件として、温度、衝突角度、粒子直径を変化させた系統的な実験を実施することを最優先課題とする。実験データが得られるようになり次第、データの取得順に、格子法、粒子法による粒子付着モデルに対する検証計算を進めて行く予定である。得られた研究成果は、学術雑誌に論文投稿するとともに、国際会議、国内学会等で積極的に発表して行く。
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