2020 Fiscal Year Annual Research Report
無添加蓄光現象の高速撮像による動的蓄光マーカーの創生とその応用
Project/Area Number |
20H04204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早川 智彦 東京大学, 情報基盤センター, 特任准教授 (10747843)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動的蓄光マーカー / 無添加蓄光現象 / トラッキング / ガルバノミラー / サーモカメラ / 紫外光レーザー / 可視光レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
従来のマーカーは外的な特徴量や事前の色素塗布を前提としており,トラッキング対象や条件が制約されていた.そこで,本研究では対象に特徴点が全く存在しない状況でも動的にマーカーを発現させる方法として,無添加で紙や布,構造物等に光を照射し終えても生じ続ける発光現象を利用し,高精度かつ高速な動的蓄光マーカーを実現する. 今年度は,まずカメラによる各素材の燐光寿命測定を測定するため,高速ビジョンで照明照射後の発光現象のイメージングを行い,画像としての特徴量を得ることに成功した.また,入力に適する照明の光量や波長を実験的に確認し入力は深紫外である短波長の方が発光の光量が増すことがわかった. 次に,得られた発光特性や波長の知見を活用し,任意のタイミングで描画可能な単一ドット動的蓄光マーカーの作成を行った.その際,マーカーに関する照明照射やマーカーとして機能しなくなるまでの時間の定式化も行うことができた.これらの成果から,対象に特徴点が全く存在しない状況でも,動的にマーカーを発現させる方法を明らかにしたと考えるに至った. さらに,研究開始時に想定していなかった成果として,照明の照射光を紫外光だけでなく,可視光も含めることで,対象に温度変化を生じさせ,動的マーカーとして活用可能なことを明らかにした.また,マーカーのトラッキング精度を向上させる手法として,モーションブラーの補償に取り組み,露光時間を長くすることで撮像画像の画質を向上させることに成功し,成果を発表した国内学会にて最優秀研究発表者賞を受賞した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,研究期間の延長を行ったことで,研究開始時に予定していた成果に加え,研究開始後に見つかった課題に対して研究を実施し,具体的な成果を得ることができた.そのため,本区分に該当すると考えている. 具体的に,まず各素材に紫外光を照射し,最適な照射波長の光源を選定すると共に,光源で対象を照射した後でも生じている発光現象を高感度な高速ビジョンで測定することができた.この際,励起光照射後に撮影された対象の燐光強度を時系列に並べることで得られる減衰曲線に対して,2項指数モデルや指数モデルを用いたモデリングを行うことができた. 次に,得られた知見を活用することや,発光に関する各パラメーターの定式化等のマーカー設計をすることで,任意のタイミングで描画可能な単一ドット動的蓄光マーカーを作成した. さらに,研究開始時に想定していなかった成果として,照明の照射光を紫外光だけでなく,可視光も含めることで,対象に温度変化を生じさせ,動的マーカーとして活用可能なことを明らかにし,国内学会での発表を行った.また,マーカーのトラッキング精度を向上させる手法として,モーションブラーの補償に取り組み,露光時間を長くすることで撮像画像の画質を向上させることに成功し,国内・国際学会での発表を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,多様な動的蓄光マーカーの構築として、昨年度の基本設計では単一ドットマーカーであったのに対し,次年度には基盤技術である高速ドローイングの知見を活かし,任意形状での動的蓄光マーカー創生を行う.光源の光路上に二軸のガルバノミラーを設置し,光軸制御をリアルタイムに行うことにより,二次元パターンを対象に描くシステムを構築する.これにより多点のトラッキング対応を目指す.パターンの具体例として,ビットパターンや円形パターン,多角形パターン等が考えられるが,形状を描き終える前に燐光が観察できなくなってしまうとマーカーとして機能しない.そのため,各パターンの始点から終点を描き終えるまでの時間を算出し,発光ないし発熱が継続している時間を最大値とする不等式によって,各パターンの描画成否を明らかにしていく. 次に,特徴を持たない個体移動のトラッキングとして,模様を全く含まない紙に対し,動的蓄光マーカーを発現させることで,トラッキングを実施する.紙をリニアアクチュエータ上で移動させ,マーカーの位置をリアルタイムに読み取り,位置の変化に応じて一軸のガルバノミラー等の光軸制御装置でレーザー照射位置を変えることで,紙の中心に対して励起光を連続的に照射し続けることを目指す.
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