2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H04252
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 宏知 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (90361518)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳 / 情報処理 / 神経活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
リザバー計算は,大規模なリカレント・ニューラルネットワークの学習手法として注目されている.特に最近では,計算能力の高いネットワークを人為的に作り込むためのメタ学習と,任意の大自由度力学系を計算資源として活用するフィジカル・リザバー計算が重要な研究課題となっている.本研究は,脳組織でフィジカル・リザバー計算を実現し,計算資源としての脳の特徴を考察した. これまでに神経細胞の分散培養系やラットの聴覚野を物理リザバーと見なし,その情報処理特性を情報処理容量という指標で定量化する手法を確立した.この成果に基づいて,本年度は,神経細胞の分散培養系では,電気刺激パルスに対する神経応答に基づいて計算能力を検証した.分散培養系は成長に伴い,ネットワーク構造と時空パターンも複雑化する.このような神経回路の複雑化に伴い,分散培養系の情報処理容量が向上することを示した.ラットの大脳皮質では,光刺激と音刺激による多次元二値入力に対して,視覚野と聴覚野の脳活動を同時に計測し,異種感覚入力が各知覚領野の脳活動に及ぼす影響を調べた.オドボール課題では,視覚野と聴覚野は,光刺激の逸脱刺激と聴覚刺激の逸脱刺激に対して,それぞれ,標準刺激よりも大きな反応を示した.視覚刺激と聴覚刺激が一致している場合と,一致していない場合とを比較したところ,視覚刺激と聴覚刺激に対する脳活動には,有意な相互作用が認められた.したがって脳の情報処理容量の定量化には,異種感覚や他領野との相互作用に留意する必要があることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,①神経細胞の分散培養系 (in vitro) とラットの聴覚野 (in vivo) を実験対象とし,これらの脳組織を計算資源として定量化する手法を確立すること,②脳の計算能力が,自己組織的な神経回路の形成やその後の経験依存的な可塑性により,どのように変化するかを調べることにある.これまでの研究成果から,目的①を達成できたため,本研究は,計画通り,おおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は,①神経細胞の分散培養系 (in vitro) とラットの聴覚野 (in vivo) を実験対象とし,これらの脳組織を計算資源として定量化する手法を確立すること,②脳の計算能力が,自己組織的な神経回路の形成やその後の経験依存的な可塑性により,どのように変化するかを調べることにある.これまでの研究成果から,目的①を達成できたため,今後は,目的②の達成に向けて注力していく.
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