2021 Fiscal Year Annual Research Report
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20H04268
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
宮田 なつき 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究チーム長 (90344225)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | デジタルハンド / 高齢者身体性 / 可動域縮小 / 把持 / 体験 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な人にとって使いやすい製品の設計を支援するためには多様な手による物の扱い方を推定できることが必要となるが,例えば手指機能への制約の生じ方は多様なうえ,すでに制約の生じた者から十分なデータを収集することは難しい.本研究では,手指機能の制約も多様な身体性の一つと捉え,健常な手を持つ者に自身と異なる身体性を疑似体験させることで,そのような身体性を持つ人に特徴的な把持戦略に関するデータを取得し,多様な物体の扱い方を推定することを目指している. 2022年度はUnity上で年齢に応じた関節可動域の縮小度合いを表現し,指定した年齢相当の可動域から外れた場合に,各指の爪に貼付した振動子を振動させることで範囲を体感できる仕組みを実装した.被験者は,把持は伴わない自由な動作を試した後,仮想的に表示された物体を振動が生じないように留意しながら把持し,所定エリアに動かすという体験を実施してもらった.このVRシステム体験により得られる把持姿勢と,実際の物理的な制約を受けた場合の把持姿勢との関係を調べるため,テーピングで母指や示指の可動域を固定した場合の観察実験も実施したところ,同じ被験者では観察される把持姿勢が一致しなかったことから,現状の提案システムで完全に体験の代替はできていないと言える.一方で,他の被験者が制約された状態で観察された把持と同様の把持が見られたことから,制約に応じた動作データを収集するという観点では一定の効用が認められたと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
引き続きコロナ禍で,被験者実験の実施には制約が多く,コンセプト確認のための予備的実験にはとどまった.また,体験システム実装にあたり把持の成立条件の判定を適切に行わないと把持体験が思うように得られないことが判明し,当初予定の形状変化モデリングをとりやめ力学的成立条件確認モジュールの実装を優先させた.そのため実施内容は計画段階から少し変更があったが,一通りの体験システムを構築し観察することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,前年度に優先的に進めた把持成立の力学的条件の確認部分の改良を進めるとともに,視覚的介入刺激として典型的な身体性を有する手モデルを一種以上実装し,体験システムとして成立させるのに効果のある要素の検証を行うとともに,制約による把持データを追加した場合の把持姿勢生成手法の改良を行う. 把持成立の力学的条件については,現状実装している簡易版では条件が緩すぎ,詳細版では成立条件が厳し過ぎなかなか成立とみなされず,どちらも体験の質を損なうことから,後者の方針で成立条件の緩和をはかる.この力学的条件は,把持姿勢生成手法の改良でも導入することとする. 視覚的な介入のための典型的身体性として,リウマチ症を想定し,部分的肥大/萎縮や屈曲を伴う表面形状の部分的変形のモデル化し再現を試みる.現状のモデルが健常な手のスケーリングにとどまっているため,文献および実際の患者写真等から情報を収集し,リウマチならば関節周辺,母指球萎縮などは手内筋に沿ってなど,疾患ごとに特有の隆起・陥没成分と発生箇所をセットで求めておき,切り替えて適用するようにする.また,振動刺激の有無,視覚刺激の提示方法の切替えや提示する動きの遅延などにより,体験性がどのように変化するかについても検証し,把持体験の成立に必要な項目を検証する.
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Research Products
(3 results)