2021 Fiscal Year Annual Research Report
Emotion evaluation of zebrafish based on ultra-multi-channel biosignal measurement and distributed constant circuit model
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20H04275
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
曽 智 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (80724351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 敏夫 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (90179995)
吉田 将之 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (70253119)
松下 光次郎 岐阜大学, 工学部, 准教授 (30531793)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生体電気信号 / 感性情報学 / ゼブラフィッシュ / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題ではゼブラフィッシュが発する運動と呼吸に起因する生体電気信号に着目し,①自由遊泳中のゼブラフィッシュの生体電気信号を計測できるか,②生体電気信号から生理状態と運動状態が同時抽出できるか,③生理・運動状態から多種多様な情動が評価可能かという3点を核心をなす学術的「問い」とし,これらを解決することで世界初の生体電気信号に基づくゼブラフィッシュの情動評価法を確立する.生体電気信号から生理・運動状態を同時計測という本研究独自のアイデアは,これまで運動解析に依拠してきた魚の情動評価法を一新する可能性がある. 令和3年度は,当初の予定通り,呼吸成分と運動成分の分離を試みた.呼吸波は魚の体内と体外のイオン交換によって生成される電気信号であると考え,移流拡散方程式のグリーン関数を用い,呼吸波の瞬時空間分布モデルを提案した.そして,提案モデルを実測の呼吸波にフィッティングすることで,呼吸波の発生源位置,瞬時振幅,拡散係数などのパラメータを求め,魚の呼吸と運動情報を同時推定した.実験では,7個体のゼブラフィッシュ成魚を用いて提案法と高速カメラの推定結果を比較した.その結果,位置推定誤差の平均と標準偏差は約7.0±1.3 mm(魚の体長の約1/5~1/4程度),速度の相関はr=0.93±3.2 (p<0.001)であることが明らかになった.また,カフェイン投与によって呼吸の平均ピーク周波数は2.25 Hzから3.12 Hzへ有意に上昇することが確認された.このカフェインによる呼吸周波数の上昇は従来文献で報告された結果と一致している.以上より,提案法は100Hzの高速カメラに近い精度で運動が追従できるとともに,カフェインに対する呼吸応答が計測可能であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は,(1) 生体電気信号中の呼吸成分と運動成分の分離と(2)呼吸波と鰓運動の関係解析を目指していた.予定通り下記に示す2項目の課題に対して十分な成果が得られたため. (1)生体電気信号中の呼吸成分と運動成分の分離:当初の予定では,魚をその体軸上に配置された複数の電圧源とみなし,平面分布定数回路に基づき水槽中の水を介した生体電気信号の伝達特性を示す平面分布定数回路モデルで表現することを計画していた.しかしながら,呼吸波の実測データと発生原理を考慮した結果,移流拡散方程式を用いて説明することの方が妥当であるという結論に至った.そこで,移流拡散方程式のグリーン関数を用いて呼吸波の瞬時空間分布モデルを提案し,これに基づいて運動と呼吸の同時推定を行った.そして,高速カメラとの運動追跡結果と比較し,高精度で位置と速度が推定可能であることを示した.さらに,カフェイン投与実験を行い,提案モデルの振幅パラメータの時系列信号から呼吸周波数が推定できることを明らかにした.以上より,呼吸情報と運動情報を分離して同時計測することに成功したため. (2) 呼吸波と鰓運動の関係解析:呼吸波は呼吸に同期した信号であることが知られているが,この関係を詳細に解析した例は存在しない.今後は,呼吸波に依拠した情動推定を行うため,呼吸波と呼吸の関係を明らかにすることは必須課題である.本研究課題では,円形水槽の周りに複数個の電極を設置し,水槽の中心に魚をおいて呼吸波を計測するとともに,高速カメラを用いて魚の鰓運動を撮影した.そして,各電極で計測された呼吸波と鰓運動を比較した.その結果,鰓運動と計測信号の間には一定の位相差が存在し,この位相差は体軸の方向に依存して変化することが明らかになった.さらに,呼吸波を用いた馴化評価が可能であることを示した.以上より,呼吸と呼吸波の関係解析に成功したため.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,令和4年度は下記の2項目の課題に取り組む. (1) 生体電気信号に基づく位置・姿勢の推定法開発: 令和3年度に引き続き,魚の位置と姿勢推定法を開発する予定である.これまでにゼブラフィッシュの頭部と尾部の2点に呼吸波信号の発生源があることを示した.もし,頭部と尾部の発生源を別々に追跡することができれば魚の姿勢が推定できる可能性がある.そこで,現状のパラメータ推定法にベイズ推定を組込み,新たな信号源情報の推定アルゴリズムを開発する.具体的には,計測した呼吸波の空間分布を用い,移流拡散方程式のグリーン関数のパラメータを最大事後確率推定する.このとき,パラメータの時系列変化をモデルに組込むことで発生源を区別する.まず,位相の時間連続性はARモデルから振幅パラメータの事前分布を生成する.そして,位置の時間連続性を考慮して,位置の二階微分から位置パラメータの事前分布を生成する.これらの事前分布と発生源情報の尤度を組み合わせることで,発生信号源を頭部もしくは尾部に割り当てる.もし,本課題が成功すれば,複数匹の魚を同一計測水槽で追跡することも可能となり,群行動の解析に応用できる可能性がある. (2) 運動状態と呼吸状態に基づく情動状態推定・評価法の開発:令和3年度に引き続き,実生物実験を行い,情動と生体電気信号を対応付けるためのデータベースを作成する.生理状態と運動状態から心理状態を説明可能な指標の候補を選定し,心理表現空間軸上にプロットすると心理刺激に対応した複数のクラスタが形成されると考えられる.そこで,抽出された生理・運動指標がどの心理状態クラスタに属するのかを辻教授(研究分担者)が開発した確率分布構造を内包するニューラルネットを用いて自動識別するアルゴリズムを開発する.
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Research Products
(6 results)